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「残念だ」被爆地落胆 16年サミット 広島落選 首脳らの訪問期待

 来年の主要国首脳会議(サミット)開催地が三重県志摩市に決まった5日、名乗りを上げていた広島市の政財界の関係者や被爆者たちは一様に残念がった。ただ核超大国の米国をはじめ、世界のトップが被爆地で核兵器の非人道性に触れて「核兵器なき世界」へ取り組んでほしいとの願いがあるだけに、来日時の被爆地訪問や、外相などの閣僚会合の開催に望みをつないだ。

 市は昨年8月7日に誘致を正式表明し、広島県や広島商工会議所と推進協議会を発足。首脳たちが平和記念公園(中区)で原爆慰霊碑に献花し、原爆資料館を見学する開催計画案を外務省に示していた。松井一実市長はこの日、中区で公務のイベント参加中に「落選」の報を受け、記者団に「誠に残念だ」と語った。オバマ米大統領の名を挙げて「原爆被害の実態に直接触れ、核兵器廃絶へ揺るぎない決意を世界へ発信してほしい」と述べ、来日する首脳たちの被爆地訪問に期待を掛けた。

 湯崎英彦知事も「これまで核兵器保有国の首脳が在任中に広島に来たことはなく、今後の核兵器廃絶に向けた大きな弾みになるはずだった」。広島商工会議所の深山英樹会頭も「非常に残念だ」とコメントし、それぞれ首脳の被爆地訪問や閣僚会合の誘致に引き続き取り組む意欲を示した。

 とりわけ、サミット広島開催が実現すれば、原爆投下国の現職大統領が被爆地を訪れることになった。広島の被爆者7団体は、オバマ氏が就任した2009年1月、被爆地訪問を促す書簡を送っている。広島県被団協(坪井直理事長)の清水弘士事務局長(72)は「とにかく広島の地を訪れ、原爆とはどんなものか見て、感じてほしいと思っていた。ぜひ広島に足を延ばして」と力を込める。一方、もう一つの県被団協の大越和郎理事長代行(75)は「残念な思いはあるが、核兵器保有国のトップが広島に来ただけで方向転換するとは考えにくい。地道に核兵器廃絶の世論を高めたい」と冷静に受け止めた。

(2015年6月6日朝刊掲載)

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