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米が臨界前核実験2回 2月と昨年12月 6月まで未公表

■記者 金崎由美

 米エネルギー省が昨年12月1日と今年2月2日の2回、ネバダ州の核実験場にある地下施設で臨界前核実験をしていたことが19日、分かった。オバマ政権下では昨年9月15日に次ぐ実施。実験後、周辺住民らに6月まで公表していなかった。これまでは実験の直前か直後に発表しており、核兵器関連活動の透明性が問われている。

 同省傘下の国家核安全保障局(NNSA)が中国新聞の取材に対し、明らかにした。2回ともロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)が主導した。

 NNSAは「備蓄核兵器の安全性の確認が目的」と説明している。米国の臨界前核実験は通算26回となる。

 米国はこれまで慣例として、実験の直前に地元住民や報道機関に実施を告知していた。しかしオバマ政権で初めてだった昨年9月の実験では、NNSAが実施直後に報道発表した。今回の2回分は実験から4カ月以上たった6月17日、NNSAのホームページに「備蓄核兵器管理計画として実施された諸実験」の一覧表に掲載。「これが一般向けの告知だ」としている。

 米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准していないが、1992年に爆発を伴う核実験の一時停止を宣言。一方で、1997年から臨界前核実験を実施している。

臨界前核実験  核分裂の連鎖反応が続く「臨界」に達しないよう、少量の核物質を使い、爆発は伴わない実験。古くなったプルトニウムが核弾頭の「信頼性」にどう影響するかをシミュレーションするためのデータ集めなどが目的とされる。未臨界核実験とも呼ばれる。米国は1997年以降、国内で続け、ロシアも北極圏などで実施している。


<解説>「核」保有への固執鮮明 日本は廃絶訴え強化を

■記者 金崎由美

 米国が臨界前核実験を昨年末から2回実施したことは、核兵器保有への固執をあらためて浮き彫りにした。「核兵器なき世界」を追求すると宣言したオバマ政権の建前と現実を注視し、被爆国は廃絶の訴えをさらに強めることが求められている。

 米国は1992年に爆発を伴う地下核実験を停止し、代替措置として臨界前核実験を行っている。しかし、「核兵器の維持管理」の名の下に行われる実験はいまや多種多様で、方法や施設も近代化が進む。核兵器開発につながるとの懸念も根強い。

 一例が、核実験場を必要としない新たなタイプのプルトニウム実験だ。昨年11月と今年3月に成功していたことが、5月に判明している。2009年には、世界最大のレーザー光線で核融合を起こし、核兵器の爆発や恒星内部の状態を再現させる「国立点火施設」がローレンス・リバモア国立研究所内に完成している。

 膨大な費用を投じて核弾頭に手を加え、「寿命」を延ばす措置も進む。平和市長会議(会長・松井一実広島市長)は20年までの核兵器廃絶を訴えるが、この措置は計画では30年まで続く。

 福島第1原発事故を機に、世界各地で「核」の脅威があらためて取り沙汰されている。「核兵器なき世界」と唱える陰で、矛盾した活動を繰り返させないためには、現実をしっかりと監視し、被爆地から揺るぎない声を上げ続けるしかない。

(2011年7月20日朝刊掲載)

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