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米臨界前核実験 ヒロシマから抗議の声 慰霊碑前 座り込み

 米国が昨年12月と今年2月の2回、臨界前核実験をしたことが明らかになったのを受け20日、被爆地広島では抗議の声が広がった。広島市の松井一実市長をはじめ、広島県内の首長や議長も相次ぎ、オバマ大統領に宛て抗議文を送った。

 広島市中区の平和記念公園にある原爆慰霊碑前では、県被団協(坪井直理事長)や連合広島などでつくる核兵器廃絶広島平和連絡会議の約70人が抗議の座り込みをした。坪井理事長は「核実験は核兵器をつくるため。いかなる実験も許せない」と憤った。県原水協やもう一つの県被団協(金子一士理事長)などは21日に座り込みをする。

 一方、松井市長は抗議文で「今後も核兵器を持ち続ける意志を表したものとも受け取れる。福島原発の事故で放射能の脅威が人々を不安に陥れている中、断じて許すことはできない」と批判。松井市長が会長を務め、世界4803都市が加盟する平和市長会議も広島や長崎、イタリア・フィレンツェなど役員都市連名で抗議した。

 広島県の湯崎英彦知事は「世界の人々へ大きな落胆と不信感を与えると同時に核兵器関連活動の情報公開、透明性には重大な問題がある」と抗議。福山市の羽田皓市長は「一切の核実験を中止し核兵器廃絶へ先導的役割を果たすよう強く要請する」とした。

 このほか呉市の小村和年市長、大竹市の入山欣郎市長、東広島市の蔵田義雄市長、尾道市の平谷祐宏市長、三次市の増田和俊市長、廿日市市の真野勝弘市長も抗議文を出した。


米臨界前核実験 「米に抗議せず」政府方針

■記者 荒木紀貴

 福山哲郎官房副長官は20日、昨年12月と今年2月に臨界前核実験をした米政府に対し、抗議しない考えを表明した。包括的核実験禁止条約(CTBT)が禁じる、核爆発を伴う実験でないためと説明している。

 福山副長官は記者会見で「米国が貯蔵する核兵器の安全性、有効性を確保するためと承知している」とし「抗議や申し入れは考えていない」と述べた。

 オバマ大統領が「核兵器のない世界に向けた具体的な措置を取る」と訴えた2009年のプラハ演説にも言及。「大統領は『世界に核兵器が存在する限り、安全で効果的な核兵器を維持する』と言った。(今回の実験は)その範囲内と認識している」と強調した。


米臨界前核実験 「核なき世界に逆行」 原水協

■記者 岡田浩平

 米国が昨年12月と今年2月に臨界前核実験をしていたことが明らかになったのを受け、日本原水協は20日、オバマ大統領宛ての抗議文を東京の米国大使館に送った。

 抗議文では、実験には核兵器の保有や配備を続け、使用に備える狙いがあるとして「核兵器のない世界を追求するとの目標に逆行する」と批判。一切の核実験と核開発計画の放棄、核兵器禁止条約の実現への努力を速やかに始めるよう求めている。

(2011年7月21日朝刊掲載)

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