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社説・コラム

『記者縦横』 平和構築 私たちの手で

■ヒロシマ平和メディアセンター・山本祐司

 「平和を築くのは私たち一人一人の手にかかっている」。広島国際会議場であった、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を学ぶスタディーツアーの報告会。欧州を訪れた中国新聞ジュニアライターと大学生が「ヒロシマユースアピール2015」を発表した。

 どんな内容にするか、米国で核拡散防止条約(NPT)再検討会議を取材した別のジュニアライターも交え議論を重ねた。戦争も核兵器もない世界に向け、文化・人種・国籍などの違いにとらわれない▽自分の言動で相手がどう考えるか想像力を働かせる―など七つの取り組みを盛り込んだ。

 その一つが「ファースト・ペンギンになる」。講演会や授業では、誰もが最初に質問・発言することをためらいがちだ。しかし1人目が手を挙げると、次々に手が挙がりだす。群れの中から最初に海に飛び込むペンギンに例えて、「真っ先に自分から発言、行動しよう」というのだ。

 実は、帰国後の報告執筆やアピールをまとめる作業を手伝う時、もう少し自覚してほしいと思うことがあった。大勢で参加したためか、「誰か」がやってくれる―。広島の若者を代表して現地に行ったのに、物足りなさを感じたからだ。

 しかし今は違う。アピールでしっかり「自分たちがやる」と宣言してくれた。会社の会議などで、つい周りを気にしてしまう自分こそ、彼らを見習わなければいけないのだろう。平和の構築は、自分の手にもかかっている。

(2015年6月12日朝刊掲載)

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