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被爆70年 平和祈り絵筆再び 胎内被爆者で洋画家 星野さん3年ぶり個展 広島市中区

 胎内被爆者の洋画家星野菊子さん(69)=福山市=が、広島市中区鉄砲町のギャラリーブラックで個展を開いている。緑内障の悪化で3年前に1度は絵筆をおいたが、被爆70年を機に平和への思いを発信しようと一念発起した。母親を描いた新作も飾る。16日まで。

 油彩の風景画、静物画を中心に50点。生まれたばかりの自らを抱く母親喜代子さん(2006年、85歳で死去)をモデルにした絵には「尊敬の念を込めた」という。

 喜代子さんは星野さんを身ごもっていた原爆投下2日後、召集先から戻らぬ父親を捜しに、今の府中市にあった自宅から入市被爆。連れて行った3歳の兄は翌年に病死した。父親は帰ってきたが、入退院を繰り返すように。喜代子さんがミシン縫いの内職に励み、星野さんも定時制高に通う傍ら、役場に勤めて支えたという。

 美大の通信教育で学ぶなどした絵を生きがいにしてきたが、視力が衰え、3年前の個展を最後に創作活動から遠ざかっていた。昨夏発足した胎内被爆者の全国組織に参加したのが転機に。平和活動に励む仲間に刺激され、絵筆を握り直した。

 広島市内では初となる個展は、午前10時から午後6時(16日は午後4時)までで、入場無料。「被爆地から発信できて感無量。気軽に見に来て」と話している。(田中美千子)

(2015年6月12日朝刊掲載)

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