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かき船移転で提訴 広島の住民ら 許可取り消し請求

 広島市中区の元安川に浮かぶ船上飲食店、かき船「かなわ」の原爆ドーム近くへの移転計画で、反対する被爆者や周辺住民たち19人が11日、移転を認めた国の河川占用許可は世界遺産条約に違反するなどとして、許可の取り消しを求めて広島地裁に提訴した。

 訴状によると、かなわは1963年から移転先の南約400メートルの元安川にかき船を設置して料亭を経営。しかし、治水上の問題で中国地方整備局から移転を求められ、市が予定先への移転を認めた上で、昨年12月に同局が河川法に基づき占用許可を出した。

 原告側は移転先は世界遺産の原爆ドーム近くで、世界遺産条約に基づくバファーゾーン(緩衝地帯)内にある点を踏まえ「かき船を設置する場合には世界遺産委員会の同意が必要」などとし、占用許可は同条約に違反すると指摘。また景観への配慮や地域の合意が必要とする河川法の準則にも違反すると訴えている。

 この日、金子哲夫原告団長が提訴後に中区で記者会見し「酒食の営業を許すことは鎮魂と平和への祈念の場の意味を失わせる」と強調。移転先では既にかなわが工事を進めており、工事差し止めの仮処分を求める訴訟も検討中という。

 中国地方整備局水政課は「適正な手続きで許可を出した」としている。(胡子洋)

(2015年6月12日朝刊掲載)

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