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次世代の作曲家「ヒロシマ」紡ぐ 25日中区で初演 生命へのエールや風表現

 次世代を担う現代音楽作曲家が「ヒロシマ」をテーマに書き下ろした作品を初演するコンサートが25日、広島市中区のJMSアステールプラザである。「HIROSHIMAHAPPYNEWEAR」のシリーズ第19弾。音楽監督を務める広島市安芸区出身の作曲家細川俊夫も注目する2人が、ヒロシマに正面から向き合った音色を届ける。(余村泰樹)

 広島大大学院准教授で、武生作曲賞(2005年)を受けた徳永崇(呉市出身)は「広島時間」を紡いだ。原爆ドームなどの被爆建物が点在し、70年前の痕跡を残す街に、異なるさまざまな時間の流れを感じ、タイトルを付けた。「レクイエムなど過去に多くの作品が残されているが、若い世代が今語れることをぶつけた」と語る。

 海外での戦争、商業的な音楽…。雑多な情報が飛び交う現代を、ポップスや瓦を割る音など純クラシックでは用いないさまざまな音で表現する。戦の絶えない世界に「状況は以前より悪くなっている」と感じながらも、最後はごちゃ混ぜの音を収束させ、新たな生命へのエールを込めた旋律を生み出す。

 日本音楽コンクール作曲部門第1位(1999年)の三浦則子は70年前に思いをはせ「ヒロシマを渡る風―室内オーケストラのために」を作った。被爆し、数年後に亡くなった祖父を持つ三浦は、原爆投下時を「風を肌で感じられただろうか。凍り付いたような空間ではなかったか」と想像する。

 原爆投下やアウシュビッツの悲劇…。「者(人間)」が「物」として扱われたとき、人は「無風」にさらされる。そんなイメージを基に、さまざまな楽器で惨劇の過去から未来へと渡る「風」を表現する。

 川瀬賢太郎の指揮で、広島交響楽団が演奏。初演の2曲のほかにも、チューバ奏者橋本晋哉をソリストに迎えた細川作曲「旅Ⅷ―チューバとアンサンブルのための」、ソプラノ半田美和子によるリゲティ作曲「マカーブルの秘密」の広島初演もある。

 午後7時開演。3千円(前売り2500円)、学生2千円(同1500円)。ひろしまオペラ・音楽推進委員会Tel082(244)8000。

(2015年6月13日朝刊掲載)

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