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社説・コラム

天風録 「長老の「喝」」

 きのうの「鉄人」に続いて、きょうはプロ野球界から「ご意見番」にご登場願う。張本勲さん。スポーツ選手たちのプレーをたたえ、時に叱る。けさも民放番組で「あっぱれ」「喝だ」と声を張り上げることだろう▲本紙連載「生きて」で先日まで苦難と栄光の半生を語っていた。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いだが「間違ったことは、絶対に言いません」。経験にものをいわせるのではなく、批評するからには勉強して臨む。気骨の人である▲こちら政界のご意見番も負けてはいない。「じじいだからといって、国の危機に黙っとるわけにはいかん」。自民党の幹部や閣僚の経験を持つ長老4人が顔をそろえた。安全保障関連法案に反対を表明し、政権に喝を食らわした▲戦中を知る80歳前後の面々はさすがに舌鋒(ぜっぽう)鋭い。憲法解釈を変えた昨夏の閣議決定について、極めてインチキな文書だと切って捨てた。防衛族だった山崎拓氏まで「軍事力行使国家への大転換で、国策を大きく誤る」▲しかし政府には馬耳東風らしい。党を離れた人や議員バッジを外した人など、関係ないと言わんばかり。長老の批判にも学者からの異論にも構わず突き進むようでは、「あっぱれ」とはいかない。

(2015年6月14日朝刊掲載)

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