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NPTの国際会議誘致 平和宣言に明記 広島市長方針

■記者 野田華奈子

 広島市の松井一実市長は22日、原爆の日の8月6日に初めて読み上げる平和宣言で、2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議などを念頭に、各国のリーダーが集まる国際会議を誘致する方針を盛り込む考えを示した。中国新聞のインタビューに応じた。

 松井市長は、NPT体制について討議する国際会議に関し「(どこまで宣言に)具体的に書くのがいいかは分からないが、各国の関係者に集まってもらい、広島で理解してもらえるようにするとの内容を入れた方がいい」と述べた。

 また松井市長は、「黒い雨」の指定地域拡大など、被爆者援護を充実するよう国に要請することを宣言に明記する方針も示した。「しっかりやってもらいたいというのが市の立場だ」と強調した。

 松井市長は8日の記者会見で、被爆70年に開かれる次回NPT再検討会議の広島誘致に取り組む意向を表明。「核兵器廃絶に向けて各国首脳に被爆の悲惨さを見てもらいたい」と意義を強調した。

 市長は、4月の就任時から「迎える平和」を掲げており、その具体的実践として、国内外に発信する平和宣言に明記する必要があると判断した。

核拡散防止条約(NPT)
 核軍縮と核不拡散、原子力の平和利用を柱とする多国間条約で1970年に発効、95年に無期限延長された。核保有国を米国、ロシア、英国、フランス、中国に限定し、核軍縮交渉の義務を課す。一方で核保有国のインド、パキスタン、事実上の保有国のイスラエルは未加盟。北朝鮮は2003年に脱退を宣言した。


≪詳報≫松井市長インタビュー むごい兵器/「迎える平和」を 平和宣言に明記


■論説委員 江種則貴

 今年の平和宣言をめぐる松井一実広島市長との一問一答は次の通り。

  ―被爆体験を盛り込むことで、訴求力のある平和宣言となりそうですか。
 自分自身が悲惨な目に遭いながら、より大変な人を救えず、後ろ髪を引かれる思いで逃げるしかなかった。そんな体験が寄せられ、読んで「ずきっ」と感じた。

 それが核爆弾だ。市民の日常を奪い、平和を崩した。むごい兵器だということをまず分かってもらいたいし、その意図は十分に伝わるだろう。自分としては得心しながら宣言文を仕上げている。

 ―今後も体験の継承や発信を平和行政の軸とする考えですか。
 証言者が少なくなる時代。被爆体験の共有こそが原爆を否定する思いにつながる。そうした思いを集めるのが市の役割だ。原点にこだわり続ける。

 ―原爆を投下し、先頃も臨界前核実験を繰り返した米国などの核保有国に何を訴えますか。
 平和を願う私たちと同じ価値観の人は米国にも少なくない。だが国家全体の意思となるとギャップが出る。そこはいかんともしがたいのだが、国家に対しては強く「核を持つな」と言いたい。

 原爆を落とした米国を憎むという発想だけでは(世界平和の実現は)難しいだろう。ただ各国の為政者には、その国の民意が投影されるはずだ。その良心、人間性に期待し、広島に来てもらって原爆被害を理解してもらう。核兵器廃絶や世界平和の訴えを聞いてもらう。それが私の言う「迎える平和」だ。

 各国のリーダーが広島に集まる国際会議の開催を提唱したい。

 ―被爆者援護策についての訴えは。
 在外被爆者も含め、高齢化が進んでいる。援護の充実を日本政府に求め続けるのが市の立場であり、市民の立場も同じだろう。

 「黒い雨」に遭い、被爆者と変わらない状況の人にも援護が必要だ。しかも急いでもらわないと。きちんと宣言に盛り込んでいく。

(2011年7月23日朝刊掲載)

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