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社説・コラム

天風録 「温度の違い」

 こんなに温度が違うものかと驚いた。ぐずぐずと湿っぽい天気が続く梅雨本番の広島から青い空が広がる沖縄へ。早くも梅雨明けしたばかりで、気温は5度以上も高い。地面の影まで濃く見える▲普天間に替わる新基地の予定地、辺野古の海辺も強い日差しが降り注ぐ。サンゴの海のボーリング調査の車が行き交う陸のゲート前では「新基地NO」と声が上がる。近くの高齢者たちが、したたる汗をぬぐいながら▲会う人、会う人、口をついて出てくるのは「本土は分かってくれない」という言葉だ。地元の大学教授は「こう例えたら分かりますか」と投げ掛けてきた。日本を侵略する外国軍を怪獣に、在日米軍をウルトラマンに▲戦後70年、ウルトラマンが駐留しているが怪獣は日本にはやってこない。一方で沖縄返還以降、米兵の犯罪は5千件を超えた。殺人に強盗に暴行…。沖縄の人にとって怖いのは、怪獣よりもウルトラマンなのだという▲どんな理由があったとしても、新たな基地を造られるのはもうごめん―。そんな実感が本土の私たちに、どれほど伝わっているだろう。沖縄との温度差はあまりに大きい。あの太陽にも負けていない声の熱さが忘れられない。

(2015年6月16日朝刊掲載)

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