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連載・特集

米軍の母国から <1> 基地と経済 閉鎖 地元の雇用左右

 住宅や老人ホーム、博物館…。米バージニア州ハンプトン市のフォート・モンロー陸軍基地は2011年に閉鎖され、跡地では既存施設も生かした再開発が進む。基地ができたのは1609年。石造りのとりでが残り、南北戦争の舞台にもなった歴史ある場所だ。「環境浄化が進めば、この辺りは国立公園になる」。米国立公園局のキルステン・タールケンスポールディング氏は跡地の一画を指さし、教えてくれた。

 閉鎖は05年、連邦政府の基地閉鎖・再編委員会(BRAC)に勧告された。ハンプトン市に与えた影響は大きかった。市によると軍人・軍属約4500人の基地で、閉鎖による経済損失は約2900万ドル(34億8千万円)という。リンダ・カーティス副市長は閉鎖を残念がる一方、「歴史の面影があるこの場所を観光名所にしたい」と話す。

 ハンプトン市にはラングレー空軍基地も横たわる。市によると軍人・軍属約1万2千人を抱え、その経済効果は年約11億ドル(1320億円)に上るという。基地による恩恵は大きい。

 米国内では冷戦終結などで基地の再編が進み、軍事関連費が見直されている。基地は雇用を含めた地元経済を左右する存在であり、各地で閉鎖を防ぐ取り組みが展開されている。

 ハンプトン市では、ラングレー空軍基地の図書館を市が運営することで、基地の費用負担を軽くできるよう協議している。基地周辺の住宅開発を抑制し、運用にも配慮してきた。同基地のジョン・アレン大佐は「官民のパートナーシップは重要だ」と強調する。

 地元のバージニア半島商工会議所のマイケル・クーンス会頭は「基地は大切な存在」としながらも、基地への依存度を軽減しようと模索する。中高生が起業について学ぶプログラムの実施もその一環だ。「基地があることで受け身になっていた。意識改革を図り、新たな産業創出につなげたい」。そう力を込めた。(増田咲子)

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 在日米軍再編によって、極東最大級の基地へと変貌を遂げようとしている米海兵隊岩国基地(岩国市)。その岩国から米国務省主催の研修プログラムに参加し、5月に米国内を巡った。基地と地域との関わりや、日本の安全保障政策に対する米側の視点をテーマに報告する。

(2015年6月16日朝刊掲載)

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