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どう見る安保関連法案 長谷部恭男・早稲田大教授 憲法学者95%が「違憲」 重大な欠陥 撤回すべき

 安倍政権が今国会での成立を目指す安全保障関連法案。集団的自衛権の行使が可能となる内容に、衆院憲法審査会に出席した3人の憲法学者がいずれも「憲法違反」と指摘するなど、法案をめぐる論点が明らかになってきた。識者、国会議員、中国地方ゆかりの人たちに、法案をどう見るか聞く。(城戸収)

 安全保障関連法案は、集団的自衛権の行使が許されるとした点で憲法違反だ。憲法9条をめぐる従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない。95%を超える憲法学者が違憲だと考えているのではないか。数多くの重大といえる欠陥を含んだ法案は、ただちに撤回されるべきだ。

他国軍と一体化

 広島市中区出身。東京大大学院教授などを経て2014年4月から現職。自民党推薦の参考人として招かれた4日の衆院憲法審査会で、集団的自衛権の行使を「違憲」と明言。法案に対する根本的な疑義を投げ掛けた。

 参考人に招かれる時、どの党の推薦か事前に分かる場合も、そうではない場合もある。今回は自民党推薦と自覚していたわけではない。正しいと思うことを述べただけ。与党の政治家は参考人が自分たちにとって都合の良いことを言えば「専門家」、都合が悪ければ「素人」と侮蔑の言葉を投げ付けてくる。

 法案で集団的自衛権の行使要件は「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」とする。いかにも歯止めをかけているように見えるが、この文言と、地球の裏側まで自衛隊を派遣しようとする政府の意図との間には、常人の理解を超えた異様な乖離(かいり)がある。

 自衛隊は、他国軍に弾薬提供などもできるようになる。他国軍との武力の一体化そのものではないか。時の政権によって必要と判断されれば、機雷掃海を超える武力行使ができる可能性もある。

判決引用は愚弄

 与党は、在日米軍の合憲性が問われた1959年の砂川事件最高裁判決を根拠に、法案を合憲と重ねて主張している。

 砂川判決では、集団的自衛権を行使し得るか否かが争点ではない。国民を愚弄(ぐろう)している。政府が9日に公表した、行使容認の合憲性を示すとした文書も昨年7月の閣議決定を繰り返しただけで、反論できないことを如実に示した。わらにもすがる思いで砂川判決を持ち出してきたのだろうが、わらは、しょせんわらだ。

 政府・与党は「安保法制が通れば日本はより安全になる」と言うが、そんな保証は全くない。米国は自分の国の利益がないと軍隊を動かさない。安全保障環境の厳しさも理由にするが、ならば日本の限られた防衛資源をなぜ地球全体に広げようとするのか。サッカーに例えると、自陣のゴールが危ないのに選手を敵サイドに拡散させるようなもの。そんな戦略を取る国ってありますか。

(2015年6月16日朝刊掲載)

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