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社説・コラム

どう見る安保関連法案 自民党・村上誠一郎元行革相 時の政府 何でもありに 

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案は、国民や憲法学者の多くが違憲と見ている。日本が直接、攻撃された場合に行使する個別的自衛権と、他国のために戦う集団的自衛権の間には深い谷がある。埋めるには憲法改正しかない。

 だが時の政府が、論理の飛躍や詭弁(きべん)により、何でもありにしようとしている。集団的自衛権がなぜ必要か、政府からはっきりした説明もない。

民主主義の危機

 出身の愛媛県今治市を含む衆院愛媛2区選出。10期目のベテランだ。小泉内閣では行政改革担当相を務めた。今月10日の日弁連主催の安保法制反対集会に参加するなど、「安倍1強」の自民党内で、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を公然と批判してきた。

 実は今、民主主義の危機にある。今回、憲法に書いていないことを解釈でできる突破口になれば、主権在民や基本的人権だって、政府の恣意(しい)で憲法を曲げられるかもしれない。立憲主義、民主主義の自殺になるんだ。憲法を有名無実化するという、政治家が一番やってはならないことをやろうとしている。

 自民党は執行部の権限が強くなり過ぎ、国会議員は正論も本音も言わなくなっている。マスコミも、もっと法案の問題点を報道するべきだ。ふがいない。

 一番問題だと思うのは、国会議員であり、弁護士でもある党内の「ダブル先生」たち。弁護士の資格を持っているから、憲法学者や他の国会議員が言うことは「取るに足らない」と受け止めているように見える。あまりに横暴だ。

自衛官の安全を

 父の故・信二郎氏は、検事だった祖父の赴任地の広島市で生まれた。内務省に入り、陸上自衛隊の前身、警察予備隊の創設に携わった。晩年は衆院議員に転じた。

 父は常々、「防衛予算が少なくて済むなら、その方がいい」「自衛隊員の安全に万全を期せ」と言っていた。私もその信念を受け継いでいる。父が存命なら、安保関連法案について「考え直せ」と言っただろう。

 安倍政権の閣僚は簡単にリスクという言葉を使うが、いいかげんな法律で派遣されるかもしれない自衛官の身を考えているのか。自衛官が集まらなくなったら、徴兵制につながる恐れだってある。憲法にどう向き合うのか。国民が自分のこととしてよく考え、判断しなければならない問題だ。正論を訴え、国民に分かってもらうのが私の使命だ。(清水大慈)

(2015年6月18日朝刊掲載)

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