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社説・コラム

【解説】援護法対象 割れる判断

 在外被爆者への医療費全額支給を認めなかった17日の広島地裁判決は、全額支給をすべきだとの初判断を示した2013年10月の大阪地裁判決と対照的な結果となった。被爆者援護法の対象に例外があるとみるかどうかで判断が分かれた。

 援護法について、広島地裁は大阪地裁と同様に「国家補償の性格がある」と認め、全ての被爆者に適用されるとするとの判断を示した。ただ一方で、在外被爆者が海外の医療機関で受診した場合は例外に当たるとした。医療、保険制度が違う国外では、日本政府が医療費支給の適正性を担保できないことを理由に挙げる。

 この判決に対し、在外被爆者訴訟を支援してきた広島大の田村和之名誉教授(行政法)は「在外被爆者が被爆者援護から切り捨てられていた十数年前に逆戻りする判決」と批判。「国家補償なら全員が一律に当てはまるはずだ」と話す。

 在外被爆者は「被爆者はどこにいても被爆者」と訴え、裁判を重ねることで援護策を拡充させてきた。高齢化の中で切実さが増す医療費の全額支給は今後の裁判の行方にかかっている。(根石大輔)

(2015年6月18日朝刊掲載)

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