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あの日も届けた命の水 被爆直後 断水防いだ職員奮闘の紙芝居 広島市水道局 ネットに動画

 被爆70年に合わせ、広島市水道局は17日、原爆投下当日に市全域が断水するのを防いだ職員たちの奮闘を描いた紙芝居「命の水 ひろしま水道物語」の動画を、投稿サイト「ユーチューブ」で公開した。「水を求める市民の渇きを助けた職員の逸話を知ってほしい」と願っている。(和多正憲)

 紙芝居は、水彩で原画を描いた17枚。あの日、爆心地から約2・5キロの牛田浄水場(現東区牛田新町)で、壊れた送水ポンプを応急修理するなどして断水を防いだ、当時の市水道部給水課技手の堀野九郎さんをモデルにしている。公開した動画はナレーション付きで、約20分間。

 市水道局によると、原爆により市水道部は職員186人のうち83人が亡くなった。市内唯一の牛田浄水場は木造建物が全壊。電気設備も被害を受け、今も被爆建物として残るれんが建物内にあった送水ポンプも一時、止まった。市内の水道管は爆風で破損し、水道再開後も約11万カ所余りの給水栓から水が漏れ出したという。

 堀野さんは非番で、国鉄広島駅(現南区)近くで被爆し、やけどを負いながら職場に駆け付けた。戦後に市発行の手記で「あの非常時、水のありがたさとともに、自分たちの任務の重大さを感じた」と振り返っている。

 市水道局は被爆60年の2005年に紙芝居を制作。DVDにも収め、学校などに貸し出していたが、70年を機に多くの人に見てもらおうと動画を公開した。今月10日には、管内である広島市と坂、府中両町内の全小学校に紙芝居計160部を寄贈した。動画は市水道局ホームページでも見られる。企画総務課は「将来は英語の字幕も付けて発信したい」としている。

(2015年6月18日朝刊掲載)

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