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米軍の母国から <4> 跡地利用 放射線 不安募る住民

 米カリフォルニア州サンフランシスコ市のトレジャーアイランド海軍基地は、1997年に閉鎖された。

 基地のあった島からは、穏やかな海とサンフランシスコのビル群が見渡せる。ただ、放射能への警告を示すマークと立ち入り禁止の文字が掲げられている。「宝島」の名前には、およそ似つかわしくない。

 「住宅エリアなどから放射性物質のラジウムを見つけた」。2007年から10年まで跡地の環境浄化などに当たってきたニュー・ワールド・エンバイロメンタル(NWE)社のドナルド・ワーズワース社長は振り返る。島内から何千という数が見つかった八角形のステンレス片などが原因ではないかとみる。こうした事実が明らかになると、基地閉鎖後に移り住んだ住民は海軍に対し「裏切られた」と憤ったという。

 サンフランシスコ市のトレジャーアイランド開発管理局のロバート・ベック氏は「人体に影響は与えない。まだ調査中の場所があり、そこはフェンスで囲っている」と説明する。

 跡地では、20年代後半の完成を目標に再開発計画が進む。住宅やホテル、商業施設、フェリーターミナルなどができる予定だ。ベック氏は「米国で見本となるような持続可能な街づくりをしたい」と意気込む。

 しかし不安を抱く住民は少なくない。NWE社には、住民から「放射線や化学物質の影響を調べてほしい」という依頼が舞い込んでいるという。

 12年に結成された住民グループ「トレジャーアイランド・ヘルス・ネットワーク」代表のキャサリン・ランドグレンさんは島で暮らしており、さまざまな有害物質に懸念を示す。「ユートピアのような場所という触れ込みで引っ越したのに。安全を脅かす問題を解決し、市民を守ってほしい」と訴える。(増田咲子)

(2015年6月19日朝刊掲載)

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