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毒ガス被害 図説出版へ 日本・イランの医師協力

■記者 馬上稔子

 旧日本軍の毒ガス製造工場があった大久野島(竹原市)の工員たちの被害と、イラン・イラク戦争(1980~88年)で毒ガス攻撃を受けたイランの被害者の症例を図説集にする計画を、日本とイランの医師が進めている。被害実態を国内外に伝えようと、来年3月の出版を目指す。

 中心は、広島大大学院の井内康輝教授(病理学)。大久野島の元工員たちの症例研究に携わった経験があり、イランの毒ガス被害者支援団体と2006年から続ける民間交流がきっかけとなった。

 図説集は両国の医師計約10人が執筆し、日本語、ペルシャ語、英語を併記。呼吸器、皮膚や眼球への影響や治療法を記す。工場で長年、毒ガスにさらされた大久野島と、毒ガス兵器による急性障害が大半のイランとでは異なる疾患や後遺症も解説。写真やイラストで分かりやすくする。

 数万人の毒ガス障害者がいるとされるイラン。被害者団体が啓発の小冊子などを作っているが、政治情勢もあり国外では実態が知られていないという。

 昨年のイラン訪問の際に井内教授が「患者支援や医学発展につながる」と、出版への協力を依頼。今年6月に再訪した際、内容や出版時期を決めた。井内教授は「両国医師の協力による患者支援や、イラン民衆の平和への努力を世界に伝えたい」と話している。

(2011年7月26日朝刊掲載)

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