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社説・コラム

どう見る安保関連法案 駒沢大・西修名誉教授 明白に憲法の許容範囲 違憲の学説は非現実的

 歴代内閣は集団的自衛権を、憲法9条が認める「必要最小限度の自衛権」の範囲を超えるものと解釈してきた。だが、9条は自衛権の行使を全く否定していない。そして国連憲章では、集団的自衛権は、個別的自衛権とともに「固有の権利」として加盟国に認められている。だから集団的自衛権の行使は憲法解釈の問題ではなく、政府の政策判断上の問題だ。安全保障関連法案は限定的に集団的自衛権の行使を認めるもので、明白に憲法の許容範囲だ。

目的は抑止効果

 専門は憲法・比較憲法学。法案をめぐり、菅義偉官房長官が「合憲派」として挙げた憲法学者3人のうちの1人だ。昨年5月、集団的自衛権の行使を認めるべきだとする報告書をまとめた安倍晋三首相の私的諮問機関、安保法制懇メンバーでもある。

 日本は主権国家だ。憲法で自衛権の行使が否定されていないのに、なぜ集団的自衛権の行使は認められないのか。国際法上、主権国家に当然認められている集団的自衛権の行使を認めないというのは、日本は主権国家ではないと言うのか。集団的自衛権の行使はなぜ、憲法上許される必要最小限度を超えるのか。政府はこうした根本的な疑問に答えないまま、何十年も過ぎてきたのが現状だ。

 集団的自衛権の目的は抑止効果であり、本質は自国防衛。そして憲法の平和条項と、集団的自衛権を含めた国の安全保障体制の保持とは、全く矛盾しないどころか一体の関係にある。国際社会の共通認識だ。

厳しい国際情勢

 衆院憲法審査会で、集団的自衛権の行使を「違憲」と断じた早稲田大の長谷部恭男教授は「95%を超える憲法学者が違憲だと考えているのではないか」と指摘している。

 学説は人数の多寡とは無関係だ。スイスは永世中立国として集団的自衛権を否定しているが、ハリネズミのような重武装をし、徴兵制を採用している。集団的自衛権の禁止派はこんな国防体制を望むのか。一番大切なことは、わが国周辺の厳しい国際情勢を分析することではないか。

 自衛権は本来、個別的、集団的とは分けられないものだ。集団的自衛権の行使を違憲とする多くの憲法学説は観念的で、非現実的であるように感じられる。

 憲法の解釈があまりにも多くなり過ぎた。憲法は施行から70年近くたつ。9条を、誰が読んでも自衛戦力さえ持てない非武装条項に改めるか、自衛戦力を持てるような条項に改めるか、二者択一の国民投票をし、憲法を改正してもいいのではないか。(城戸収)

(2015年6月20日朝刊掲載)

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