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「福島まだ戻れぬのに」 原発事故での住宅無償提供打ち切りへ 中国地方 自主避難者戸惑う

 福島第1原発事故のため福島県内外に自主避難している住民に対し、同県が住宅の無償提供を2017年3月末で打ち切る方針を決めたのを受け、中国地方の避難者に戸惑いが広がっている。避難先で子育ての最中だったり、まだ福島に戻るのに不安を覚えたりする人たちにとって、経済的な負担が増えるためだ。(加茂孝之)

 「補助制度がずっと続くとは思っていなかったが、ついにその時が来たかという思い」。広島県内の避難者でつくる「ひろしま避難者の会アスチカ」副代表の佐々木紀子さん(43)は肩を落とす。自身も事故後、小学生の息子2人の健康を考え、福島市から会社員の夫(40)の実家がある広島市へ避難した。夫は福島に残り、離れての生活が続く。

 佐々木さんはアパートで息子と暮らし、災害救助法に基づく補助を受けている。「補助がなくなれば、家賃分の収入をさらに得なければならない。避難者を支援する活動も、どれだけ続けられるか」

 福島県などによると、同県から広島県への避難者数は221人(5月14日現在)。うち37世帯102人が無償制度を利用し、公営住宅やアパートに住む。

 無償制度の打ち切り決定を受け、アスチカの会員から「子どもが受験を控え、当面は福島に戻れない」「安全を考えるとまだ福島に帰る気になれない」など困惑の声が上がっているという。同会が3月にまとめたアンケートでも、回答した会員の4割が今後の予定を決めかねていた。

 中国地方では、岡山県の319人を最多に計776人が避難している。岡山市の市民団体「子ども未来・愛ネットワーク」代表で、福島県川内村から避難している大塚愛さん(41)は「安心して生活できるよう国や自治体は支援を続けて」と要望する。

 福島県は15日、無償提供の打ち切りを表明。災害救助法に代わる県独自の支援策として、県内に帰る避難者の引っ越し費用や、避難している低所得世帯の家賃の補助制度などを検討している。

(2015年6月22日朝刊掲載)

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