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66年ぶり「平和の鐘」 響け 広島市中央公園に2代目現存 市民有志 8月6日実行へ

 広島市中区の中央公園にある「平和の鐘」が、1949年の平和祭(現在の平和記念式典)で鳴らされただけで、以後、式典では使われていないのを知った市民が「『平和の鐘』響け再び実行委員会」を結成した。66年ぶりとなる今年の8月6日から毎年、平和への願いを込めて打ち鳴らそうと準備を進めている。(客員編集委員・冨沢佐一)

 鐘は49年、広島平和記念都市建設法の制定を記念して造られた。地元13業者でつくる広島銅合金鋳造会が、広島の焼け跡の金属を鋳込んで造り市へ寄贈した。口径1・2メートル、高さ1・4メートル、重さ800キログラム。8月6日の平和祭で当時の浜井信三市長が鳴らした。しかしその後は、式典会場が平和記念公園に移ったため、式典で鳴らされることはなかった。

 鋳造会会員の遺族が「父が造った鐘をもう一度鳴らして」と願っていたが、一昨年死去。伝え聞いた元市職員高東博視さん(69)=佐伯区=が、他の遺族から聞き取りをするなどして鐘の由来を調べ、11人で実行委を結成。中央公園を管理する市の許可を得て、毎年8月6日に鐘を鳴らす恒例行事を開くことにした。

 高東さんによると、鐘の製造、寄付は浜井市長が依頼した。その際、形は西洋のベル型に▽焼け跡から集めた金属を鋳込む―の2点を要望。鋳造会は例のない大きさだったこともあり、当時の金額で100万円をかけ、破裂する危険も覚悟しながら製造したという。

 鐘はノーモアヒロシマズの英文とハトの羽ばたきが刻まれ鉄塔につるされた。現在も当時のまま中央公園にあるが、木々が生い茂って目立たなくなっている。

 平和記念式典で鳴らされる「平和の鐘」は、初代が盗難に遭い行方不明、中央公園の鐘は2代目。3、4代目は市内の寺から借りた半鐘で、現在使われているのは5代目となる。高東さんは「製造した人々や遺族の方々の願いを実現し平和を願うため、鐘の響きをよみがえらせて、毎年打ち鳴らしたい」と話している。

 今年は8月6日午前9時半から、鋳造会の遺族らを招いて行う。高東さんTel082(924)5383。

(2015年6月22日朝刊掲載)

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