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社説・コラム

国交正常化きょう50年 徐張恩・駐広島韓国総領事に聞く ヒロシマの思い共有へ

 日本と韓国は22日、国交正常化から50年を迎える。サッカーのワールドカップ(W杯)共催など両国の関係が良好だった時期もあるが、歴史認識をめぐる溝が深まった現在、関係改善の糸口は見えない。駐広島韓国総領事館(広島市南区)の徐張恩(ソ・ザンウン)総領事(49)に今後の日韓関係や被爆地広島の果たすべき役割を聞いた。(鈴中直美)

 ―竹島(韓国名・独島(トクト))や従軍慰安婦問題などで日韓関係が冷え込んでいます。
 「反日」や「嫌韓」などの感情の多くは、インターネット上で顔が見えない人同士で過熱している。確かに韓国社会は慰安婦問題に強い関心があるが、新聞紙面で見る国際政治だけが全てではない。日韓の国民は互いの国を訪れ、観光や食文化を楽しんでいる。政治と関係なく、好きなものは好きという感覚も根付いている。

 ―安倍晋三首相は8月、戦後70年の新たな談話を出します。
 (おわびを示した)村山談話や河野談話が受け継がれるかがポイントだ。半世紀の間に日韓関係は浮き沈みがあった。それでも長期的には経済や文化、外交で発展してきた経緯がある。もし歴史への評価があいまいになる談話になったら、今後50年の明るい関係を築けるだろうか。首相が自ら進んで出すと言うからには、後退だけはしてほしくない。

 ―来年の主要国首脳会議に先立つ外相会合を広島で開催する案も浮上しています。
 期待している。G7(先進7カ国)は核兵器を保有したり、核の傘に保護されたりしている。広島を訪れても核兵器廃絶などで急激な変化はないだろうが、根本的な思想哲学に変化があると信じている。

 ―被爆70年を迎える広島の役割は何でしょうか。
 私自身、昨春着任するまで被爆の実態をよく知らなかった。この1年間、母国から多くの政治家や官僚、研究者を広島に招いた。原爆資料館を訪れ、詳しい被害を知った人たちはみな驚く。多くの人に発信し、平和への思いを共有したい。

 また、広島は多くの外国人が訪れる。被爆地として反戦や反核だけでなく、外国人を排除しない「反ヘイトスピーチ」などの声をもっと積極的に上げてもいいと思う。

 ―今後、日韓関係の改善のために何ができますか。
 管轄する広島、山口など5県と母国との間で、自治体と高校計35件が友好・姉妹縁組を結んでいる。政治家は何年かすれば交代するが、市民レベルの関係はいつまでも続く。国を超えた草の根のつながりを深めていくことが重要だ。私は日韓基本条約が締結された1965年という特別な年に生まれた。日韓の市民をつなぎ、信頼関係を築けるよう努力したい。

(2015年6月22日朝刊掲載)

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