×

社説・コラム

天風録 「みそとキムチ」

 一さじの土に微生物が1億匹以上いるらしい。そんなふうに書き出す韓国の詩に引き込まれたことがある。足裏から伝わる、ふかふかした土は数知れぬ微生物の恵みだとの賛歌だった▲みそやキムチといった発酵食品に慣れ親しんでいる人間同士の共感だったかもしれない。どちらも微生物の働きからもたらされる。地産地消をうたう「身土不二(しんどふじ)」が、日韓の農民たちの間で通じるのも何かの縁だろう▲一番近く、似た者同士なのに、一番理解し合えていないものは―。なぞなぞみたいな間柄になっている両国である。差し向かいの首脳会談は、3年以上もご無沙汰続きという。このまま、疑心暗鬼に取りつかれてはまずい▲国交を取り戻してから半世紀の節目を、きのう迎えた。意地を張り合っていた双方の首脳が自国での記念行事だけにせよ、顔を出したのにホッとした向きも多かろう。ぎくしゃくした外交をまず立て直してもらいたい▲低い食料自給率といい、少子高齢化や農山村の過疎といい、海を挟んで共通の課題を幾つも抱えている。何としても、共存共栄の道を見いだすほかあるまい。似た食の文化を持つ国らしく、味が出るまで発酵に時間がかかろうとも。

(2015年6月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ