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スリランカ復興 野球で後押し カープとJICA中国 戦後の経験生かす 野村前監督ら来月指導

 広島東洋カープと、国際協力機構中国国際センター(JICA中国)は、内戦で傷ついたスリランカに野球の素晴らしさを伝え、復興を後押しする取り組みを始める。原爆の被害から立ち上がる広島で市民がカープを心の支えにしたことから、野球が持つ強い力を確信。前監督野村謙二郎さん(48)=写真=たちが7月に同国を訪問し、代表チームを指導するほか、子どもに野球を教える。(貞末恭之)

 一行は野村さんを含む4人。9日に現地入りし、7日間滞在する。西部ディヤガマで同国の代表チームを指導、中部キャンディで子ども向けの野球教室も開く。内戦の被害が大きかった北東部では地雷除去の現場を視察する。幼児教育に携わる青年海外協力隊員にも会い、激励する。

 取り組みはJICAがカープに提案して実現した。青年海外協力隊員約900人をスリランカに派遣してきたJICAは、紛争で荒廃した同国の国民を勇気づける方策を検討。市民球団として誕生し、市民と苦難を共にしてきたカープの協力を得たいと考えた。

 松田元オーナーは「戦争で疲れた国民に笑顔をもたらすことができるなら、協力を惜しまない。日本の野球を知ってもらういい機会にもなる」と快諾。米大リーグで臨時コーチをした経験もあり、海外の野球に詳しい野村さんに訪問を働きかけた。ボールやグラブなどの用具も贈る。

 JICAは同国で、既に野球を通じた支援をしている。青年海外協力隊員が2002年から代表チームの監督を務め、現在は4人目だ。12年にディヤガマにできた南アジア第1号の野球場は、JICAを通じた寄付金などが資金だった。競技人口は約5千人という。

 野村さんは「戦後70年を迎え、復興を果たした広島だからこそ出せるメッセージがあるはずだ。カープ代表として野球を通じて平和の大切さを伝えたい」と意気込む。球団は経済支援に結び付くグッズ開発の可能性も探る。

スリランカ
 インド洋に浮かぶ島国。面積は北海道の5分の4に当たる約6万6千平方キロで人口約2千万人。1983年、政府軍と少数民族タミル人による反政府武装組織タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)の内戦が起き、7万人を超える犠牲者が出た。2009年に政府が内戦終結を宣言。激しい戦闘を繰り広げた北東部の生活インフラの復興が課題となっている。

(2015年6月23日朝刊掲載)

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