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沈没から70年 続く祈り 海軍輸送船元通信員 広島県世羅の木香さん 犠牲者胸に 恐怖伝える

 世羅町伊尾の木香(もっこう)春三さん(85)は戦時中、通信員として乗り込んだ海軍輸送船桂丸(9800トン)の機雷接触による沈没を体験した。乗組員48人のうち25人が死亡する中、間一髪で護衛船に助けられた。24日、沈没から70年を迎えた。「生き残った者として戦争の恐ろしさ、悲惨さを伝えていきたい」。犠牲者の冥福を静かに祈る。

 桂丸は、護衛船の先導で瀬戸内海の佐柳島(香川県多度津町)沖を航行中、1945年6月24日午前0時すぎに機雷に触れた。木香さんは夜間任務を交代し、船橋の通信室を出て寝室に向かうデッキにいた。「船体が折れ、沈むまで2分ぐらいだった」と振り返る。

 階段につかまったまま海へ投げ出された。暗闇の中、渦にのみ込まれそうになりながら浮遊物にしがみついた。そのまま約4時間、漂流。明るくなって護衛船に救助された。頭を負傷していた。当時16歳。親しかった船長や同僚の通信員は海底に沈んだという。

 木香さんは、体験を手記にまとめ、地域の講演会などで話してきた。「瀬戸内海では他にも多くの船が沈没し、大勢が亡くなった。足腰は弱ってきているが、できる限り続けたい」と力を込める。(与倉康広)

(2015年6月25日朝刊掲載)

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