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中電、住民に発言要請 2009年松江 説明会 社員らの参加促す

■記者 山本和明、樋口浩二

 中国電力は29日、2009年に松江市であった島根原子力発電所(同市鹿島町)のプルサーマル計画の住民説明会で、原発に協力的な住民に、質問や要望を発言するよう依頼していたと発表した。社員やグループ企業に説明会への参加も要請し、参加者の半数は中電関係者だった。

 中電は「意見、要望が多く出た方が地域の理解につながると判断した」と説明。社員らの参加は強制ではないとし、「国からの働き掛けはない」としている。

 中電によると、2009年1月17日にあった国主催の説明会の前に、原発やプルサーマル計画に理解のある住民8~10人に、質問や要望の発言を依頼。実際に6人程度が発言した。

 説明会への参加は、島根原子力本部の部長級社員たちが、中電社員約80人に加えグループ企業や取引先約26社に要請した。電話や電子メールで伝え、当日は中電社員約30人、グループ企業などの約150人が出席。全体の参加者361人の半数を占めた。

 説明会後に一部の参加者が答えたアンケートでは、約7割がプルサーマル計画に「理解が深まった」と回答した。

 島根原発の点検不備問題を受け、松江市で10年9月に計3回あった説明会でも、社員やグループ企業に開催日時を伝えていた。説明会の参加者は3会場で計374人で、うち中電関係者は計約80人だった。


原発説明会中電発言要請 「誤解招く」地元反発


 中国電力の社員らが参加者の半数を占めていた、島根原子力発電所(松江市鹿島町)のプルサーマル計画の住民説明会。原発に協力的な住民へ中電が発言依頼していたことも明らかになり、地元からは「誤解を招きかねない」などと批判の声が上がった。過去の原発増設の公開ヒアリングなどでも、同様の行為が「常態化していた」との指摘もある。

 2009年1月、松江市であった島根原発2号機のプルサーマル計画の説明会。参加者361人のうち、半数を中電関係者が占めていた。発言した傍聴者のうち6人程度は、中電が事前に依頼。中電によると、担当社員が親交の深い住民の自宅などに事前に出向き、発言を頼んでいた。

 「正直、ここまで多いとは思わなかった」。島根県原子力安全対策室の細田晃室長は、中電関連の出席者の多さに驚く。「慎重さを欠く行為。民意の誘導と誤解されても仕方ない面もある」と指摘する。

 説明会後に一部の参加者が答えたアンケートでは、約7割がプルサーマル計画に「理解が深まった」と回答。経産省はこれをホームページで公開している。出席した島根原発増設反対運動の芦原康江代表(58)は「大量の動員で、住民の意見が届かなくなり、自治体の判断をゆがめた可能性がある」と憤る。

 旧鹿島町の元町議は、島根原発3号機増設の公開ヒアリングなどでも「中電関係者が大勢いるのはみんな知っていた」と明かす。松江市の関係者も「中電による『動員』は当たり前と思っていた」と振り返った。

(2011年7月30日朝刊掲載)

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