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「核社会」問い直す あすから原水禁世界大会 原水禁系 福島でスタート

■記者 岡田浩平

 原水禁国民会議などの原水爆禁止世界大会が31日、福島市での福島大会で幕を開ける。「脱原発」を含め「核社会」を問い直す議論を深める。一方、日本原水協などの大会は8月3日、広島市での国際会議に始まり核兵器廃絶を軸に討議する。福島第1原発事故を受け、原水禁運動を先導する両団体の力点の違いが明確に表れる。

 原水禁が提起する大会基調はA4判、7ページ。「軍事利用も商業利用も核被害に苦しむのは同じ。事故を歴史的転換点ととらえ、核文明を問う運動にしたい」と掲げ、「脱原発」が大きな比重を占める。

 各地の原発計画に反対し地元住民と連携、1970年代から「脱原発」を唱えてきた。2009年の政権交代を機に政策提案も重視し、今年1月には省エネルギー、脱原発などを盛り込んだ提言を政府に提出した。

 その直後の事故。井上年弘事務局次長は「政策を変えられなかったのが悔しい。だからこそ核被害を含む『ノーモアヒバクシャ』の訴えを強めねば」と言う。ただ、連合、核禁会議と共催する広島、長崎の各集会のアピールは立場の違いもあり「脱原発」に踏み込まない方向だ。

 日本原水協などの世界大会は国際会議の冒頭から核兵器禁止条約の交渉開始を議題に討論。広島、長崎両大会でも議論を掘り下げる。早期交渉開始へ慎重な政府に対し「被爆国の道義的責任」として主導するよう、迫る狙いだ。

 原発事故に関連し米国、ロシアなどの核被害者を招いて放射能汚染の対応策を議論する全体会議、分科会もある。今年の重点項目ではあるが柱ではない。

 原水協は02年に「原発からの段階的撤退」を代表理事会で決めた。高草木博代表理事は「原水協としては脱原発の方向だが、それを目的にした運動体ではない。脱原発は核兵器廃絶へ行動する国内外の団体との共通基盤にはならない」。放射線被害への関心が高い今、兵器に利用された時の惨事を訴え廃絶の世論を高める構えだ。

(2011年7月30日朝刊掲載)

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