×

ニュース

「未来のために行動を」 国連軍縮長野会議が閉幕

■記者 岡田浩平

 長野県松本市で開かれていた国連軍縮会議(国連軍縮部、同アジア太平洋平和軍縮センター共催)は29日、地元高校生が平和学習の発表や会議出席者との意見交換をし、3日間の日程を終えた。

 特別議題「高校生との平和・軍縮トーク」では、県内6校が報告。長野市の長野西高の生徒代表は広島市の原爆慰霊碑の碑文を紹介したり、若者の核軍縮への関心の低さを自校のアンケート結果で示したりし「全ての人が未来のために核軍縮の知識を持ち行動すべきだ」と訴えた。

 引き続き閉会式をし、須田明夫軍縮大使が政府を代表して「あらゆる国は軍縮と不拡散へ共同行動を加速しないといけない。さらなる議論と努力へ豊かな材料を提起できた」と会議の成果を話した。式後に同じ会場でミニコンサートがあり、小沢征爾さん指揮の弦楽合奏が出席者たちを魅了した。


<解説>国連軍縮長野会議が閉幕 アプローチ早める糧に

■記者 岡田浩平

 今年で23回を数えた国連軍縮会議は初めて核兵器禁止条約を議題とし、集中的に討議した。非核兵器保有国の有志や非政府組織(NGO)が実現を訴える中で、核保有国の政府関係者も交えて議論した意義は大きい。

 「厳しい質問を浴びるほど、主張が鍛えられる」。NGOピースボートの川崎哲共同代表は条約をめぐる3時間近い議論を前向きにとらえた。

 全ての国に核兵器の開発から使用までを法的に禁じるべきだと主張する川崎氏ら発表者4人に対し、16人が質問。核弾頭が一つもない状態を検証する難しさを指摘する否定的な意見も多かったが「願望から交渉」へ向かうワンステップともとれる。

 会議のもう一つのキーワードは福島第1原発事故だった。国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が基調講演し「原子力の平和利用」を1議題に据えたのもある。が、むしろ、事故でさえこれだけの放射線被害を及ぼす核が、兵器として使われた場合の悲惨さを核兵器廃絶の議論の基盤にどれほどできたのか。その意味で物足りなさが残る。

 長崎市の田上富久市長は27日、開会式でのあいさつで原発の「安全神話」を引き合いに「核兵器は使われないというのは神話だと、悲劇が起きてから気付いては遅い」と語った。保有国、「核の傘」の中にある国の政治家、政策担当者は、この思いを共有し、核兵器禁止条約を含む多角的な軍縮アプローチを早める糧にしてもらいたい。

(2011年7月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ