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永田町発 「非核2.5原則」への転換 自民の高村元外相に聞く

■記者 荒木紀貴

米軍寄港で現実的対応
同盟重視 国民理解へ努力

 「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則について、自民党が米軍の核兵器搭載船の寄港を認める「非核2・5原則」への転換を打ち出している。同党国家戦略本部で外交・安全保障分野の座長を務める高村正彦元外相(山口1区)に「国是」を見直す理由を聞いた。

 ―非核2・5原則を表明した狙いは。
 日本は主権回復から60年間、戦争をしたことがない。日米安全保障条約が抑止力として機能してきた。非核三原則は、核兵器を積んだ米艦船が日本に寄港したり、領海を通過したりするときは核兵器を取り外せというもので、現実論ではない。非現実的なことでは安保条約は持たない。

 ―非核三原則は、歴代の自民党政権が掲げてきた「国是」です。
 現実には2・5原則でやってきた。被爆国としての感情と、日本人の命を守らなければいけないという現実とのはざまで、当時の指導者は暗黙の了解をせざるを得なかった。米艦船が日本の領海に入るときに、わざわざ戦術核を取り外すことはあり得ないということはみんな知っていた。

 事実と違うことだったので、いいとは言わない。ただ責める気にはならない。平和を守るのは大変なことだ。

 ―外相だった当時も暗黙の了解があったのですか。
 小渕内閣で外相に就任したが、米艦船が核兵器を積んでいない時だった。(冷戦構造がなくなった)1990年代初頭からは一般的に戦術核を積んでいないといわれている。

 物騒な情勢になれば米艦船が核兵器を積むかもしれない。日本が「駄目」と言うなら「核の傘」を出ることを覚悟しなければいけない。「理念のために死んでもいい」という人もいるかもしれないが、国に命を守ってほしいという人が大部分だ。有事に当てはまる原則を平時につくっておかないといけない。

 ―被爆地には、非核三原則を法制化すべきだとの声があります。 
 心情としてはよく分かるが、日米同盟をしっかりしないといけない。国民に理解してもらう努力が必要だ。

 ―理解は得られそうですか。
 努力する。理解を得られないから言わないとなると、密約や暗黙の了解になってしまう。

非核三原則
 1967年に佐藤栄作首相が表明した。だが、政権交代後の2010年に外務省の有識者委員会が、米軍核搭載艦船の立ち寄りを容認する密約があったと認め矛盾が判明。秋葉忠利広島市長(当時)は同年の平和宣言で政府に三原則の法制化を求めた。民主党政権は三原則を堅持する一方、法制化には慎重姿勢を示す。自民党国家戦略本部が20日に発表した報告書は「陸上への核配備は認めないが、核兵器を積んだ艦船の寄港などは容認する」と明記した。

(2011年7月31日朝刊掲載)

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