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社説・コラム

天風録 「誇りある豊かさ」

 ギリシャのバルファキス財務相は革ジャンで決め、バイクにまたがる経済学者だ。EUの盟主たるドイツに対して舌鋒(ぜっぽう)鋭い。ショイブレ財務相と相対した2月には、こんな「切り返し」を見せた▲ショイブレ氏「われわれは意見が一致しないことで合意した」。バルファキス氏「いや、われわれは意見が一致しないことさえ合意できなかった」。ユーロ経済に詳しい竹森俊平さんの著書に教わる▲EU諸国がギリシャに対して金融支援の打ち切りを「最後通告」した。緊縮策の是非を問う国民投票を、チプラス首相が突如として提案したことに不信感を募らせたようだ▲バルファキス氏には先月、辞任説が流れている。首相がEUとの調整に別の人物を登用し、孤立したとの観測か。だが民意を盾に譲歩を迫る作戦なら、こわもてで鳴る学者大臣の退場はまだ早かろう▲ギリシャ国内の銀行には早くも預金者が殺到している。国民の多くは緊縮策に反発しながらも、ユーロ圏残留を望んでいるという。くだんの財務相同士が腹を割り、先の問答に倣うなら「<ユーロ残留以外では>意見が一致しないことで合意した」とはいかぬものか。それなら、いちるの望みがあろう。

(2015年6月29日朝刊掲載)

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