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社説・コラム

どう見る安保関連法案 亀井静香・元金融担当相 今国会だけで成立 乱暴 解散・総選挙で信を問え

 日本は戦後、平和主義を掲げ歩んできた。国際紛争解決のために一切戦争しないという「国是」を一内閣が変えたいと言う。安全保障関連法案の中身も、今国会だけで成立させようとする考えも乱暴過ぎる。

 法案は憲法違反。当たり前だ。国会での議論はへ理屈ばかり。成立には憲法を改正するのが筋だし、解散・総選挙で国民に信を問うべきだ。国民にとって基本的な問題を国会議員だけで決めてはいけない。

戦後最大の危機

 衆院広島6区選出。当選13回を数え、衆院議員で最年長になった。「郵政解散」を機に、政調会長や派閥領袖(りょうしゅう)を務めた自民党を離れて10年。現在、無所属で活動する。12日には山崎拓・自民党元副総裁たち、かつて同党に所属した与野党の重鎮3人とともに記者会見を開き、法案反対の立場を鮮明にした。

 われわれは「日本は今、戦後最大の危機に直面している」との意見で一致している。集団的自衛権の行使を認めると戦死者が出る。自衛官は国を守るため命を懸けている。しかし、他国を守るために死ぬ覚悟まで持っているか。国民も、自衛官が戦死するかもしれないということを認める覚悟があるのか。閣僚がよく使う「リスク」なんて生易しい言葉じゃない。

 自民党内から、反対の声がほとんど上がらない。みんな賛成かといえば違うはずだ。物言わぬ、行動しない議員は国民の代表として選ばれる意味はないがね。若い議員は、戦争というものにぴんとこないんだろう。戦争しちゃいかん。当時を少しでも知る人にとって理屈じゃない。保守、革新なんて問題でもない。

潮目が変わった

 私も安倍晋三首相も改憲論者。日本人の魂のこもった自主憲法を制定したい。だが、このままではできない。憲法解釈の変更を閣議決定し、憲法をないがしろにしてしまっては。保守とされる多くの人が反対するのは、そんな危惧もある。

 国会は9月27日までの会期延長を決めた。延長幅は戦後最長の95日間。首相は今国会で法案を成立させる姿勢を崩していない。

 国会の行方は五里霧中。首相は自ら霧の中に入って行った。安倍政権にとって今、潮が引き始めている。衆院憲法審査会で自民党推薦の憲法学者が違憲と指摘したことで潮目が変わった。大事な時に凡ミスが起きると潮が引くもんだ。

 政権支持率が下がり、政界や国民の中の物言わぬマグマが動く可能性がある。強行採決すれば、来夏の参院選は、自民党が下野した2009年の衆院選と似た状況になるかもしれない。(城戸収)

(2015年6月29日朝刊掲載)

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