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戦争漫画を描く意義は 広島で学会 「ゲン」題材にシンポ

 日本マンガ学会の第15回大会は最終日の28日、広島市中区のJMSアステールプラザで、原爆漫画「はだしのゲン」に焦点を当てたシンポジウムを開いた。ヒロシマや戦争を題材にしてきた漫画家たちが、戦争を描く意義などについて語り合った。

 「『はだしのゲン』の多面性」をテーマに2部構成であり、会員や市民たち約200人が聞き入った。

 第1部は3人が登壇。評論家の呉智英さん(68)が「ゲン」の描線に着目。「中沢啓治さんは、意図的に泥くさいタッチでゲンを描いている。だからこそ土俗的な味わいが出ている」とし、平和教材の側面とは異なる魅力を紹介した。

 第2部は、西区出身のこうの史代さん(46)、同区の西島大介さん(40)たち「ゲン」を読んで育った世代が、戦争漫画を描いたきっかけや思いを語り合った。

 ベトナム戦争を取り上げた西島さんは、同戦争の映画を見て「反戦を訴える内容なのに、戦闘シーンはかっこいいと思う。そんな心引き裂かれる感じが重要だと感じた」と語った。

 父のシベリア抑留体験や名古屋大空襲を題材にした、おざわゆきさん(50)は「私は、戦争を知らない世代。だからこそ、今の人に伝わるように描くことができる」と強調。原爆や戦時中の呉の暮らしを描いたこうのさんは「漫画には表現の幅がある。平和なおかげで描けるし、読める。いろんな漫画家に、戦後漫画の『伝統』である戦争を描いていってほしい」と期待を込めた。(石井雄一)

(2015年6月29日朝刊掲載)

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