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社説・コラム

『晴耕雨読』 知事は政治家? 役人?

 「私自身は一人の人間。議会で答弁するときは政治家ではない。行政の責任者として答弁している」。25日の県議会一般質問で、溝口善兵衛知事が展開した持論に強い違和感を覚えた。

 安保関連法案に対する考えを問われ、「そういう問題は国会で処理をするもの」と素っ気なく答える溝口知事。さらに「政治家としての考えを」と食い下がる共産党の大国陽介県議に発した言葉だ。

 県政を取材して約1年3カ月。溝口知事の「国の決定を待って」「政府の説明をよく聞いて」との取材への受け答えに、もどかしさを感じていた一人として、「謎が解けた」と思わず膝を打ってしまった瞬間だった。

 「選挙で選ばれたが、通常の私の役割は、議会を含め、県の執行部、行政のトップとしての発言となる」「政治活動や選挙活動の時は、政治家として発言する」―。要は、知事の前に務めていた官僚時代と同じく、普段は国の方針を忠実に実行する「役人」として振る舞っているということだ。

 だが、知事とは県全般の行政を預かる、まさしく最高責任者。政治的な判断が必要だからこそ、県民による選挙で選ばれている。

 県は、これから中国電力島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の再稼働の判断を迫られる。県民の命と生活に直結する問題だ。溝口知事には、今春の知事選で託された26万8284票とあらためて向き合ってほしい。(川井直哉)

(2015年6月29日朝刊掲載)

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