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脱原発 ノーモア・フクシマ 原水禁など世界大会 福島で初

■記者 岡田浩平

 原水禁国民会議などの被爆66周年原水爆禁止世界大会が31日、福島市のホテルでの福島大会で開幕した。福島第1原発の事故を受け「脱原発」を議論の柱に据え、被爆地広島、長崎を経て8月11日の沖縄県宜野湾市での沖縄大会まで続ける。

 福島での開催は初めてで、約850人(主催者発表)が参加。原爆や東日本大震災の犠牲者へ黙とう後、長崎の被爆者で大会実行委員長の川野浩一原水禁議長があいさつ。「核兵器は確実に廃絶への道を歩んでいる。福島原発事故を最後にしよう。ノーモア・フクシマと叫ぼう」と訴えた。

 藤本泰成事務局長は「核社会を根底から問う」趣旨の大会基調を提起。原発と同様に沖縄県の在日米軍基地も国策で強いられてきたとの認識を示し「一人一人の命に寄り添い、社会を変えていこう」と呼び掛けた。

 福島県富岡町の被災者が避難状況を報告。長崎の被爆者や「ビキニ事件」で被災した第五福竜丸の元乗組員、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故の被害者も放射線被害を語った。ノンフィクション作家鎌田慧さんは政府に脱原発の実行を求めた。

 世界大会のメーンスローガンは「核も戦争もない平和な21世紀に!」。広島市では4~6日に広島大会、5日に国際会議がある。

 日本原水協などの世界大会は3日、広島市での国際会議で始まる。


響く「脱原発」「核廃絶」 原水禁福島大会 住民には戸惑いも


■記者 岡田浩平

 福島市で31日開かれた原水禁国民会議などの原水爆禁止世界大会。被爆者や核の被害者たちがフクシマとヒロシマ、ナガサキを結び「脱原発」「核廃絶」の訴えを重ねた。ただ、福島第1原発事故による放射線被害の恐怖とまさに闘う住民の中には、運動に乗り切れない複雑な思いも交錯していた。

 「被爆者は原爆の晩発障害に今も苦しんでいる」。長崎市の被爆者、奥村英二さん(72)は体験を語り、事故被害者の健診や医療補償の実現を強調。「今はみんなが放射線の怖さを考え始めた」と運動の拡大を期待する。

 こうした訴えに、初めて世界大会に参加した福島県伊達市職員の伊藤美恵子さん(53)は「被爆者の苦しみが心に響いた。今日が私の原水禁運動のスタート」と意を強くしていた。山口県上関町の上関原発を建てさせない祝島島民の会の山戸貞夫代表(61)も初めて参加し「脱原発へ連携を強めたい」と語った。

 福島大会に合わせ、県平和フォーラムが市内で催した屋外集会には雨の中、約1700人(主催者発表)が集まった。郡山市の会社員松本徳子さん(49)は中1の娘を東京の親類宅に預けたつらさを吐露し「原発はいらないと声を上げ、子どもたちを守って」と訴えた。

 飯舘村の住民団体で活動する佐藤健太さん(29)も壇上に立ち「子どもの未来のため、大人としてやるべきことをやろう」と声を張り上げた。が、あえて脱原発や核廃絶には触れなかった。「何も問題が片付いていない。心が追いついていない」。世界大会に参加してなお、今日の命や暮らしをどう守るかで、精いっぱいの様子だった。

(2011年8月1日朝刊掲載)

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