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「前と同じ」「体質に問題」 中電書類偽造 行政や市民が批判

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)内の低レベル放射性廃棄物を処理する施設で、機器調整に偽造の報告があったことが分かった30日、地元では批判や失望の声が相次いだ。2010年3月に明らかになった同原発1、2号機の点検不備問題に重ね合わせた不安も膨らむ。

 「さまざまな取り組みをしてきた途上でこうしたことが起きてしまい、申し訳ない」。この日、島根県庁に溝口善兵衛知事を訪れた中電の苅田知英社長は沈痛な面持ちで頭を下げた。溝口知事は「信頼を大きく損なう」と苦言を呈した。

 県と松江市は午後5時から職員計6人を原発に派遣し、立ち入り調査。同市の松浦正敬市長は「点検を忘れたり資料を改ざんしたり、前回と同じようなことが起きている」と指摘。2号機の再稼働や3号機の運転開始には「今のままで中電に(原発の運転を)任せられるのかという話にもなる。影響は当然ある」。中電は、原発30キロ圏の自治体のある鳥取県でも説明に追われた。

 島根原発の稼働・再稼働に反対の市民団体「さよなら島根原発ネットワーク」事務局の芦原康江さん(62)は「同じミスを繰り返す中電の体質に問題がある。市民の見方も厳しくなるはず」とした。(秋吉正哉、松島岳人、川崎崇史)

【解説】信頼回復 道のり遠く

 中国電力の島根原発で発生した低レベル放射性廃棄物の処理をめぐる虚偽記録で、苅田知英社長自らが地元の松江市を訪れて謝罪したのは、それだけ問題が重大と受け止めているからにほかならない。原発の信頼性が揺らぐ中、中電の姿勢が再び問われる事態だ。

 2010年3月、島根原発1、2号機で多数の機器の点検不備が発覚。同年6月3日に再発防止策を盛り込んだ報告書を国に提出したのを機に、この日を会社で「原子力安全文化の日」と定めた。中電は専門部署を設け、組織風土まで踏み込んで安全管理の体制を見直してきたはずだった。

 しかし、今回の問題を踏まえると、対策は不十分だったと言わざるを得ない。担当者は過去の書類のコピーを切り貼りして監査用の文書を作っており、意図的な改ざんである。内部でも上司がチェックする仕組みになっていたが、虚偽に気付けなかった。

 今後、島根原発1号機の廃炉作業が始まれば、大量の放射性廃棄物が発生する。一方で、2号機は再稼働に向けた手続きを進めている。いずれも安全の確保を最優先にする必要があり、今のままでは地元住民たちの信頼を取り戻すのは難しい。(河野揚)

(2015年7月1日朝刊掲載)

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