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懸念の声 党派問わず 安保法案 中国5県地方議会 世論を反映か

 安全保障関連法案に対し、慎重審議や制定中止を求める意見書の可決が相次いでいる中国地方5県の地方議会。「平和国家の在り方が変わりかねない」などとして、所属する会派や党派を超えて懸念の声を上げている。自民党系議員が意見書に賛成するケースもあり、法案への反対意見が多い世論を反映しているとみられる。各地域選出の国会議員の影響もありそうだ。(中島大、伊東雅之)

 意見書は、市民団体の陳情や請願を受けて共産党など野党議員が発議し、本会議へ提案される例が多い。意見書を可決した広島県内4市町の議会は、この提案に自民党系などの議員が歩調を合わせた形だ。

 島根県津和野町議会も同様のケースで、憲法9条の理念と反すると指摘した上で「国際社会で日本が求められていることは平和外交」と法制定の中止を求めている。

 6月20、21日に共同通信社が実施した世論調査では、法案を「違憲」と回答した人が56・7%。法案への「反対」も58・7%でいずれも過半数となった。保守系の議員が多数を占める地方議会での可決は、こうした世論を踏まえたものとみられる。

 「憲法に反することは明らか」「戦争をする国へ歩もうとする」―。三次、庄原両市と世羅町の議会の意見書には、法案に対し厳しい言葉が並んだ。庄原市議会のある保守系議員は「審議が不十分なのに強引に法案を成立させようとしているのはおかしいと思った」と賛成の理由を話した。3市町は衆院広島6区にあり、法案に反対する同区選出の亀井静香氏の影響があるとの見方もある。

 一方、安倍晋三首相(山口4区)たち閣僚や自民党幹部がそろう山口県では、法案や国会運営に異議を唱える意見書は可決されていない。山口県議会では法案成立を求める意見書が開会中の定例会に提案される見込みで、可決が確実視されている。

 世論の動向や国会での審議をにらみ、揺れる議員の姿勢もうかがえる。広島県北広島町議会は昨年6月、集団的自衛権の行使容認に反対する意見書を可決したが、今回は一転、否決した。国会審議の行方をみながら各議会が判断する状況は続きそうだ。

<安全保障関連法案に反対するなどした意見書を可決した中国地方の自治体>

   自治体名 可決日   要望の内容
広島 竹原市  6月26日 国民的議論の深まり
   三次市  7月 1日 法案の廃案
   庄原市  6月30日 法制定への反対
   世羅町  6月18日 法制定の中止
岡山 和気町  6月22日 法制定の中止
   奈義町  6月18日 慎重審議と法案成立強行反対
島根 雲南市  6月24日 慎重審議
   津和野町 6月25日 法制定の中止
鳥取 鳥取県  6月26日 慎重審議
   湯梨浜町 6月19日 法制定の中止
   琴浦町  6月19日 慎重審議
   日南町  6月26日 法案の廃案

(2015年7月2日朝刊掲載)

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