×

ニュース

[いくさの記憶] 和庄地区 最後の慰霊祭 呉空襲 参列70人 体験つなぐ

 呉市中心部で1800人以上の死者が出た空襲から70年になった1日、各地で犠牲者を悼む慰霊祭や法要が営まれた。防空壕(ごう)で550人以上が亡くなるなど、最も被害が大きかった和庄地区の慰霊祭はことしが最後。当時を知る人や住民が参列した。(小笠原芳)

 和庄公園であった慰霊祭には、約70人が姿を見せた。小村和年市長も出席し「生きている人が次の世代に記憶をつながなければならない」とあいさつ。参列者は焼香し、供養地蔵に手を合わせた。

 空襲を体験した宮本澄枝さん(88)=本町=が開いてきたが、体力的に続けるのは厳しくなり区切りをつけた。宮本さんは保管していた地区の戦災者名簿を市に預けた。名簿には約800人の名前が書いてあり、市は毎年6月30日に開く合同慰霊式で供養する。

 2歳で空襲に遭い、壕の中で生き延びた田中桂子さん(72)=郷原町=は、最後と聞いて初めて訪れた。家族6人で壕に逃れ助かった藤盛綾子さん(72)=本通=は「続けてほしいが仕方ない。これからは個人的にお参りしたい」と手を合わせた。

 慰霊祭後には、空襲体験者が当時の様子を紙芝居にして近くの園児に披露。宮本さんは「最後に大勢に来てもらえてよかった。伝わるものがあればうれしい」と語っていた。

 和庄に近い寺西会館(本町)でも、自治会が空襲犠牲者約2千人の冥福を祈る法要を営んだ。市は午後0時15分、庁舎や防災行政無線でサイレンを鳴らし、市民に黙とうを呼び掛けた。

(2015年7月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ