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シベリア抑留元教諭の半生 交流あった東広島の東さんが出版 手記やコラム 2冊にまとめ

 元高校教諭で、2013年に92歳で亡くなった上野邦彦さん(東広島市西条町)の手記や生前発表したコラムを、交流があった主婦東文子さん(69)=西条下見=が2冊の本にまとめ、出版した。

 「凍える大地 シベリア抑留の日々」(風詠社)は四六判、290ページ。陸軍兵士だった上野さんは戦後捕虜になり4年間、東欧の収容所などで過ごした。過酷な労働や拷問を受けた体験を克明に記している。

 1981年に退職してから取り組んだ西条町の里山での自然観察をテーマにした「生きもの賛歌」(同)は四六判、100ページ。登山を通じて不登校の子どもたちと心を通わせる様子をつづっている。県内外の延べ800人を山へ案内した年もあったという。

 東さんは、小学生だった息子の不登校をきっかけに上野さんと知り合った。シベリア抑留の体験を聴いたのは一度きり。穏やかな上野さんが「拷問のことは思い出したくない」と苦しみの表情を浮かべたのを鮮明に覚えている。

 抑留に関する手記の存在を知り、遺族の了承を得て出版に踏み切った。「平和を望み、子どもたちに深い愛情を持って接してくれた先生の姿を伝えたい」と話す。いずれも500部印刷した。(森岡恭子)

(2015年7月2日朝刊掲載)

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