×

社説・コラム

大谷門主「平和への願い」(要旨) 広島の原爆供養塔前法要

 広島市中区の平和記念公園の原爆供養塔前で3日に営まれた法要で、浄土真宗本願寺派の大谷光淳(こうじゅん)門主(38)=写真=が読み上げた「戦後70年に寄せる平和への願い」の要旨は次の通り。

 原子爆弾のもたらした惨禍は、放射能の影響として、また痛ましい記憶として今も多くの方々を苦しめ続けています。このことを思う時、あらためて、人間の愚かさ、戦争の悲惨さ、原子爆弾の非道さを感じずにはいられません。

 第2次世界大戦が終わって70年がたとうとしています。しかし、70年という歳月によって、争いがもたらした深い悲しみや痛みを和らげることができたでしょうか。そして、平和への願いと学びをどれだけ深めることができたでしょうか。

 戦争の当時を生きられた方々が少なくなっていく中で、戦争がもたらした痛みの記憶は遠いものとなり、風化し、忘れられつつあります。先の大戦において、本願寺教団が戦争の遂行に協力したことも、決して忘れてはなりません。平和を語り継ぐことが、戦後70年の今を生きる私たちに課せられた最大の責務です。

 いかなる争いも、悲しみの涙を伴うことを決して忘れてはなりません。少なくとも、お念仏をいただく私たちは、地上世界のあらゆる人々が安穏のうちに生きることができる社会の実現のために、最大限の努力を惜しんではなりません。

 戦後70年という歳月を戦争の悲しみや痛みを忘れるためのものにしてはなりません。この年が、異なる価値観を互いに認め合い、共存できる社会の実現のためにあることを世界中の人々が再認識する機会となるよう願ってやみません。

(2015年7月4日朝刊掲載)

年別アーカイブ