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社説・コラム

どう見る安保関連法案 NPO法人日本紛争予防センター・瀬谷ルミ子理事長 個別の論点 検討が必要 

 安全保障関連法案の議論を聞いていると、全面的に賛成、反対という主張になりがちだ。だが、安保関連法案は、国連平和維持活動(PKO)協力法など改正10法案を一括した法案と、新たに制定を目指す他国軍支援の法案からなる。さまざまな論点があり、そうした二元論的な議論にあまり意味はない。世界情勢が変わる中、必要な部分もあれば、慎重にした方がいい部分もある。

住民保護に対応

 英国大学院で紛争解決学を学んだ。ルワンダやシエラレオネで、非政府組織(NGO)や国連の一員として兵士の社会復帰支援や平和構築活動に携わった。2013年から現職。

 例えばPKO協力法の改正。自衛隊が他国の部隊を守る駆け付け警護や、攻撃を受けた住民の保護といった任務が加えられた。国連は今、住民保護を重視するようになっている。沿わなければ、日本の担当地域の住民だけが保護されない事態になる。武器使用基準の緩和も現場では必要だ。変化に対応するには、法律を整備するべきだ。

 一方、国連以外の平和維持任務にも参加できるようになる。でも、日本は一定の中立性が担保され得る国連のPKOに特化した方がいい。多国籍軍や連合軍による空爆後、復興支援に入る場合、日本が空爆を容認したとみられかねないからだ。自衛隊がイラクでの復興支援活動で派遣されていた時、自分が駐在していたアフガニスタンでは米国の協力者と見なされ、日本人の誘拐や脅迫が増えた。リスクは高まる。

反対の声は当然

 現行法改正を一つにまとめて一括法案にしたことは、審議時間の短縮を狙う政府の意向もあるとみられる。野党は「理解してもらおうという気持ちがない」と反発した。

 駆け付け警護について安倍晋三首相は、日本のNGOなどを守るために必要だと説明していた。だが、NGOは軍と一定の距離を取り中立性を重視する。反対の声を上げるのは当然で、現場の機微な状況を理解していないことが透けて見えた。その他の改正でも似たケースがあるのではないか。

 一本化された法案には本来、何年も話し合わねばならない内容が含まれているのに、細かな議論が封じられている。政府・与党は拙速と言わざるを得ない。与党は、建設的な批判や代替案にきちんと向き合わないといけない。野党も建設的な提案をしてほしい。今回の議論を、日本の国際貢献の在り方を考え、実践につなげるきっかけにすべきだ。(山本和明)

(2015年7月7日朝刊掲載)

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