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安全管理の甘さ露呈 中電の島根原発記録偽造 自治体へ報告も遅れ 不信募り再稼働に影響も

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)で6月30日、明らかになった低レベル放射性廃棄物(LLW)処理をめぐる記録の偽造は、中電の安全管理体制の甘さを露呈した。担当者の隠蔽(いんぺい)をチェックできず、地元自治体にも連絡が遅れた。2号機再稼働に向け、原子力規制委員会の審査が進む中でのトラブルだけに、再稼働にも大きな影を落としそうだ。(川井直哉)

 中電によると、問題になっている水量計は、水やセメントを混ぜて作るモルタルでLLWをドラム缶の中に固定する工程で使用する。水量計の保守点検は30代の男性社員が1人で担当。半年に1度、メーカーに送り調整する社内規定を守らず、2013年11月以来、実施していなかった。LLWを青森県六ケ所村で保管する日本原燃の監査には、古い記録をコピーしたり、切り貼りしたりして記録を偽造し提出していた。

 中電は、昨年10月、日本原燃の監査に向け、社内で準備を進めていた段階で偽造された可能性が高いとする。その後、日本原燃から原本を求められたため、担当者の上司が6月22日になってメーカーに問い合わせて問題が発覚した。23日から担当者が「体調不良」として休んだため、原因が把握できたのは25日だった。

 中電は、10年の原発点検不備問題の後、翌11年12月から約6万点の機器の点検時期を一元的に把握する統合型保全システム(EAM)を導入。再発防止策に取り組んできた。しかし、EAMの対象は、点検サイクルが1年以上の機器が対象。1年未満は「備考欄」に示されるだけで、対象外だった。そのため、水量計は13年11月以降、1年半以上「放置」されたままになっていた。

 地元自治体との安全協定に基づき、中電が島根県や松江市などに報告したのは30日。だが、原子力規制庁には26日に報告しており、4日間の「空白」があった。

 10年の点検不備問題を教訓に、中電は6月3日を「原子力安全文化の日」と定め、歴代の社長が島根原発の記念行事に参加していた。今回の問題を松江市の松浦正敬市長は「いわゆる『再犯』だ」と断じた。

 2号機の再稼働には地元の同意が必要。苅田知英社長は会見で「積み重ねてきた地元の信頼はリセットされた。影響はないとはいえない」と語るにとどまった。

(2015年7月3日朝刊掲載)

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