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社説・コラム

ひと・とき 俳優・岡崎弥保さん 被爆体験の朗読に力

 「被爆者ではない私が、被爆者を演じている。初演の時は特別なことだと力が入ったけど、今は、普段からの在り方やものの見方が変わってきた」。凜とした表情で語る。

 井上ひさし作「父と暮せば」など、原爆をテーマにした作品の朗読劇に取り組んでいる。今春には丸木俊の絵本「ひろしまのピカ」を朗読したCDも出版。被爆者の体験に寄り添い、伝える活動を続ける。

 横浜市生まれ、千葉育ちの団塊ジュニア世代。「原爆」にたどり着いたきっかけは、2011年の東日本大震災だった。

 朗読ボランティアとして訪ねた被災地。福島第1原発事故の被災地では、「人の暮らしが突然断ち切られているような不気味な風景が広がっていた」。これまで漠然と捉えていた原発や原爆の問題が、1本の線につながったという。

 思えば、父親は三次市出身。広島市内の学校に通っていた父の友人には被爆者も多くいた。広島を訪ね、被爆証言を聞いたり、個人的に体験を聞き取ったりするようになった。

 被爆70年の夏は、東京都内での「父と暮せば」上演以外にも、北海道や千葉県などで原爆にまつわる朗読や講演が控える。「被爆者の物語を語るには、壮絶な記憶をつぶさにたどり、その痛みを生きなくてはいけない。つらく苦しいが、一歩ずつ心を込めて語り継いでいきたい」(森田裕美)

(2015年7月3日朝刊掲載)

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