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レンズはとらえた戦後70年 存廃議論に揺れた原爆ドーム1965~66 平和誓う聖地 解体危機

 毎年、国内外から多くの観光客が訪れる世界遺産の原爆ドーム(広島市中区)。原爆の惨禍をまざまざと示し、恒久平和を誓う聖地は、かつて解体の危機にさらされていた。

 戦後20年。原爆ドームの厚さ50~70センチの壁は風雨で経年劣化が進み、今にも崩れ落ちそうな状態だった。広島市が付近を通行止めにしたほど。「惨劇を忘れないために永久保存を」「思い出すのもいやだから取り壊せ」と議論が湧き起こったのはこの時期である。

 市は保存調査に着手。後に広島大の調査チームが「補強すれば保存できる」との結論をまとめた。1966年7月、市議会も「原爆ドーム保存の要望」を満場一致で決議する。こうして永久保存が決まり、ドーム保存募金の誕生につながっていく。

 ベトナム戦争は65年に入ると、米軍が北ベトナムに対する大規模な爆撃を始め、戦線が拡大。中国では66年5月、文化大革命が起こった。国内では、英国のロックバンド、ザ・ビートルズが同6月に初来日し、旋風を巻き起こした。(村上昭徳)

(2015年7月8日セレクト掲載)

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