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「遺族の元へ」願い届け 原爆供養塔納骨室 広島市が公開

 広島市は9日、平和記念公園(中区)にある原爆供養塔の地下納骨室を報道陣に公開した。引き取り手のない約7万人の遺骨を安置した状態で公開するのは20年ぶり。一人でも多く遺族の元へ返すため、その存在に関心を高めてもらおうと、被爆70年の節目に踏み切った。

 納骨室は27平方メートル、高さ2メートルで、中央の祭壇を囲むように棚がある。名前が分かりながら引き取り手が見つかっていない815人と、遺族の事情などで供養塔に永久安置している621人の遺骨を1人ずつ白い骨つぼ(高さ、直径とも約10センチ)に納めて並べている。名前が分からない大多数の遺骨は、大小117個の木箱に納めてある。

 市は1968年、判明者の名簿を公開。75年から全国の自治体などに名前を連ねたポスターを送って掲示してもらい、2010年までに845人の遺骨を遺族たちに引き渡した。ただ、ここ5年は途絶えている。

 市は05年、納骨室の補修に伴い遺骨を別の場所に移した際に室内を報道陣に公開したことはあるが、遺骨がある状態では95年が最後だった。市原爆被害対策部の杉浦信人調査課長は「お墓と同じ厳粛な場なので公開を控えてきた。遺族捜しは年々厳しくなっており、多くの人が関心を持ち、協力してくれれば」と願う。同課Tel082(504)2191。(田中美千子)

(2015年7月10日朝刊掲載)

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