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被爆敷石の物語 絵本に 児童文学作家こやまさん刊行 世界に贈る市民活動 共感

 広島市を走る路面電車の被爆敷石に平和への願いを込め、世界に贈る市民活動を題材にした絵本「いのりの石 ヒロシマ・平和へのいのり」が刊行された。アイスランドでこの石と出合った、児童文学作家こやま峰子さん(79)=神奈川県相模原市=が、国や世代を超えて平和を祈り、他人を思いやる心を描いた。

 石を贈る活動をしているのは「ひろしま・祈りの石の会」。爆心地付近の敷石約200枚に女性像などを彫って世界各地に贈っている。1991年からこれまでに欧州や中東、アフリカなど107カ国に届けた。

 こやまさんは2011年、かねて交流があったアイスランドで、日本から贈られた被爆敷石を見た。現地の人たちが毎年、広島と長崎に原爆が落とされた日に灯籠流しをしていることも知った。「こんな遠く離れた国で日本に心を寄せ、痛みを感じてくれていることに感動した」。被爆70年の節目に執筆を決めた。

 「石」の語りで、「あの日」の惨状や、平和への思いを託す市民の活動と広がりが紹介されている。

 東京出身のこやまさんは幼少期に戦争を体験。空襲を逃れ、縁故疎開した浜松市郊外でも、B29による爆撃で燃えさかる市街地を目撃した。「戦争がどこまでも追い掛けてくるようで本当に怖かった」と振り返る。終戦後すぐ、それまで米国を「鬼畜米英」「敵国」と教えていた教師が、「お友達」と言ったことにも衝撃を受けた。「子どもに間違ったことを教えてはいけない。道理を引っ込めてしまう戦争は絶対してはならない」。豊かな想像の世界へ子どもたちを導きたいと、児童文学の道を志したという。

 こやまさんは「被爆した石が海を渡ってメッセージを届けている実話を通じ、若い世代に戦争の愚かさと平和の尊さに気付いてほしい」と語る。

 絵は、塚本やすしさん。本文の英訳と、敷石を紹介する写真資料なども収められている。40ページ。1404円。(森田裕美)

(2015年7月10日朝刊掲載)

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