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菅首相 平和政策この1年

■記者 岡田浩平

 菅直人首相が原爆の日の6日、広島市の平和記念式典に2年連続で出席する。昨年の式典で打ち出した「非核特使」制度などの実績をアピールするとみられるが、この1年、核兵器廃絶に向けたリーダーシップは乏しい。自ら「検討する」と語った非核三原則の法制化も動きはない。

 国際会議などで被爆体験を証言する非核特使は昨年9月以降、被爆者ら延べ34人が委嘱され広島、長崎両市のほか欧米など21カ国で活動した。外務省は被爆者の体験記と証言映像を主に国連公用語に翻訳し、ホームページで5月から掲載。ともに首相が昨年の式典で表明した。

 国際社会でも地道な取り組みを始めた。核兵器を持たない10カ国のグループ「軍縮・不拡散イニシアティブ」(NPDI)を昨年9月に発足。「核リスクの低減」を目標に、今年4月の第2回会合では核弾頭数など核兵器の共通報告様式案をまとめ、保有国に示した。

 2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で軍縮の成果を求められる核保有5カ国は、今年6月にパリで会議を開き「宿題」の議論を開始。一橋大の秋山信将准教授(国際政治)は「NPDIは核保有国と急進的な軍縮を求めるグループの橋渡しができ、日本の影響力の基盤にもなる」と評価する。

 ただ、ほかに目立った政治的な動きはない。外相として軍縮に熱心だった民主党の岡田克也氏が昨年9月に退任したため「『経済外交』重視になり、軍縮の優先順位は下がった」と秋山准教授は指摘する。

 菅首相は昨年の長崎の原爆の日に非核三原則の法制化を「私なりに検討したい」と会見で語った。枝野幸男官房長官は「総理が調べたり検討したりしたかもしれないが、政府に指示はない」と言う。

 被爆者の平均年齢が77歳を超える中、日本被団協は6月の総会で、本年度も非核三原則の法制化や核兵器禁止条約の実現を運動方針に決めた。田中熙巳(てるみ)事務局長は「核兵器の廃絶へ核保有国の議論も引っ張る行動力を」と願う。

(2011年8月3日朝刊掲載)

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