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社説・コラム

『書評』 3+6の夏 ひろしま、あの子はだあれ ドームなど題材 70年前と今結ぶ 中澤晶子さん新刊

 広島市東区の児童文学作家中澤晶子さん(62)の「3+6の夏 ひろしま、あの子はだあれ」=写真=が汐文社から刊行された。

 絵画教室に通う6人の子どもたち。ある日突然、スケッチブックに、描いてもいない絵が現れて…。今も広島に残る被爆電車や原爆ドームをモチーフに、現代の子どもと、70年前に原爆で亡くなった子どもを、軽やかにつなぐ物語だ。昨年、全国紙に連載した作品をまとめた。

 中澤さんは名古屋市で生まれ、中高時代を広島市で過ごした。初めて入った原爆資料館で見た光景が忘れられない。周囲には被爆2世の友人も多かった。差別を恐れて口を閉ざしていたり目に見えない放射線の後障害や遺伝的影響におびえていたりする友人の親たちの姿を見て育った。

 中澤さんは「70年であろうが100年たとうが、あの日広島で起こったことに終わりはない。子どもたちにとっては大昔の物語かもしれないけれど、この本を読んで一歩でも踏み出す子どもがいてくれたらうれしい」と話している。

 四六判、119ページ。1512円。

(2015年7月11日朝刊掲載)

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