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福島さんのネガ 搬出 戦後日本を問い続けた写真 データ化 柳井 教科書利用など想定

 戦後日本の闇を告発してきた報道写真家福島菊次郎さん(94)=柳井市=のネガフィルムをデジタルデータ化する共同通信イメージズ(東京)の担当者が13日、福島さん宅を訪ね、二十数万枚に上るネガを運び出した。主な作品は10月にも、インターネット上で有償提供を始める。(井上龍太郎)

 同社は写真や映像などのビジュアルコンテンツを販売している。福島さんが写真集に使用したネガは、9月をめどに優先的に処理。写真説明も添えてデータベース化する。写真展や教科書での利用申請を想定している。

 担当者は福島さんの確認を仰ぎながら、書棚や段ボール箱に保管していたネガを慎重に箱詰めした。「ピカドン ある原爆被災者の記録」など、社会的反響を呼んだ戦後日本の写真の全てのネガをアパートから搬出した。

 千葉県松戸市に住む長女川﨑紀子さん(59)も立ち会った。福島さんは1970年に自衛隊の兵器製造を暴いた写真集を発表後、東京の自宅を何者かに放火された。ネガだけは、下校中にいち早く火災に気付いた紀子さんが運び出し無事だった。搬出作業を見守り、「無我夢中だった」と当時の記憶を重ねた。

 福島さんは、自作のデータ化による活用を願い続けていた。作業後、「やっと片が付いた」と安堵(あんど)の表情を浮かべていた。

(2015年7月14日朝刊掲載)

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