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原爆孤児の姿 舟入高生熱く 広島戦災児育成所が舞台の創作劇 佐伯区で25日上演 「たくましさ伝えたい」

 原爆で親を亡くした子どもが身を寄せた広島戦災児育成所を舞台にした創作劇が25日、広島市佐伯区の区民文化センターである。育成所のあった同区皆賀地区の住民が描いた紙芝居などをもとに舟入高(中区)の演劇部が上演。「悲しみや怒りだけではない孤児のたくましい姿を伝えたい」と練習に励んでいる。(鈴中直美)

 母親を待ち続けた橋の上での会話、トラックの荷台に揺られて育成所に向かう場面…。放課後の練習で部員16人が動きを確認し合う。「お母さんとの距離感や記憶など、せりふにならない感情を想像して演じて」。顧問の須崎幸彦教諭(58)の指導に熱が入る。

 劇のタイトルは「廣島戦災児育成所 童心寺物語」。育成所は被爆後の1945年12月に開所し、敷地には童心寺と呼ばれる寺も建てられた。子どもたちが焼け跡から掘り出した家族の遺骨を納め、「仏様に祈ればお父さんお母さんに会える」と毎日お参りした。67年の閉園までに312人が巣立った。

 皆賀地区の住民が育成所の歴史や暮らしぶりについて紙芝居をまとめ、「童心寺を次世代に語りつぐ会」を結成。被爆70年を機に、46年前からヒロシマを題材にした創作劇に取り組んでいる舟入高に上演会を呼び掛けた。

 演劇部の部長で3年の田中樹音(じゅね)さん(18)は「重いテーマだが、演劇を通じて被爆者の思いや平和の尊さを伝えたい」と話す。

 午後1時半開演、無料。朗読や合唱もある。舞台の様子はDVDに収録し、学校などに貸し出す計画。語りつぐ会の久保田詳三会長(68)は「育成所や童心寺を知らない住民は多い。高校生による上演で、若い世代に思いが伝わってほしい」と期待している。

(2015年7月16日朝刊掲載)

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