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社説・コラム

【解説】「成立ありき」の強行

 安全保障関連法案の衆院通過で、「60日ルール」により、仮に参院が議決しなくても今国会中に衆院で再可決できる環境が整った。国民に理解が広がらず違憲批判が強まる中、「成立ありき」と受け取れる採決の強行は、政府・与党のおごりと言わざるを得ない。

 約1カ月半にわたった審議で、議論が深まったとは言い難い。特に「憲法違反」の懸念を拭い去る、説得力ある説明ができなかった事実は重い。

 歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を認めることに、安倍晋三首相たちは、過去の政府見解や最高裁判決を持ちだして「合憲」と言い切る。しかし、国民が疑念を抱いているのは、各種世論調査の結果から明らかだ。

 焦点の一つだった、集団的自衛権をどんな状況で行使するのかについても明確な基準を示せなかった。政府は「総合的に判断する」と主張する。これでは、いくら「歯止めをかけた」と言われても政府の裁量次第で行使の範囲が拡大する懸念は消えない。

 戦後日本の安全保障政策の在り方を一変させる法案だ。首相が真に国民の理解を得たいなら今国会での成立にこだわらず、時間をかけ誠実に説明を尽くすしかない。(城戸収)

(2015年7月17日朝刊掲載)

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