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市民 「戦争する国」懸念 安保法案衆院通過 「テロや戦場怖い」 中国地方 集団的自衛権 理解も

 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案が衆院本会議で可決された16日、中国地方の市民はどう受け止めたのか。

 「戦争の時代に戻る法案。安倍首相の暴走としか思えない」。安芸高田市の農業森川省三さん(66)は憤る。「日本がテロの標的になる可能性も高まるだろう」と懸念した。

 戦争を体験した世代からは「絶対反対」と声が上がる。浜田市の角村藤子さん(92)の夫は、輸送艦で南方戦線へ兵士を送り届けていたという。「出発前に『戦争は嫌だ』と言っていた若者が、戦地では『日本万歳』と叫んで戦っていたと夫から聞いた。戦争は人の心を変えてしまう」と声を震わせた。

 呉市の主婦相原梢江さん(73)は、原爆投下直後の広島で親戚を捜し歩いた父から惨状を聞いて育った。「子や孫にそんな経験はさせたくない。戦争をなんとなく容認する風潮が恐ろしい」

 若い世代にも不安が広がった。「戦争する国になって、この先、自分が戦場に行くことがあるかもしれないと思うと怖い」と話したのは広島市西区の高校3年藤本侑希君(17)。子ども2人を育てる安佐南区のパート土居まゆみさん(41)は「子どもの将来に漠然とした不安を感じる。難解な言葉が出てくる法案は内容を理解しにくい」と話す。

 安倍首相は法案採決前に「国民に十分な理解を得られていない」と認めた。「それならなぜこんなに成立を急ぐのか」と疑問をぶつけたのは、東広島市の大学3年田中昌平さん(20)。自らも十分理解できていないとし、「2、3年後に多くの人が『大変なことになった』と後悔するのでは」と不安を抱く。

 十分な説明を求める声も目立つ。周南市の高校3年河村聖哉さん(18)は「僕たちが学んだ憲法9条は何だったのか。日本は戦争をしない国と信じて育ってきたのに」と戸惑う。米海兵隊と海上自衛隊が共同使用する基地がある岩国市の無職片山清勝さん(74)は「これから基地がどう変わっていくのだろう。市民が不安を感じないようにしてほしい」と注文を付けた。

 一方、集団的自衛権の行使や法案に一定の理解を示す声も。福山市の大学3年板野紫帆さん(20)は「近年は尖閣諸島の問題など近隣の国との緊張が高まっている。集団的自衛権が使えるようになるのは良いことだと思う」と受け止めた。

 尾道市の会社社長宮本典之さん(41)も「国際情勢は時代とともに変わっており、仕方がない」とした上で「政府の説明は十分とは言い切れないが、米国との関係もあるだろうから」と推察。「法案成立は時間の問題だと思う。国民が選んで大与党をつくってしまったのだから、強行採決も当然の結果と受け止めている」と話した。

(2015年7月17日朝刊掲載)

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